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- 第20回竸基弘賞授賞式 「安心、安全でくらせる社会を」
1月11日、兵庫県立神戸生活創造センター1階でNPO法人国際レスキューシステム研究機構による第20回竸基弘賞授賞式が行われた。竸基弘賞は、阪神・淡路大震災で亡くなった神戸大の大学院生にちなんで設けられ、将来レスキュー工学を担う若手の研究者を奨励する賞である。<蔦旺太朗>
(写真:竸基弘賞受賞者たち。兵庫県立神戸生活創造センターで)
1月11日、兵庫県立神戸生活創造センター1階でNPO法人国際レスキューシステム研究機構による第20回竸基弘賞授賞式が行われた。竸基弘賞は防災・レスキューシステムの研究開発において、学術的あるいは技術的に顕著な業績をあげた 概ね40歳未満の研究者や技術者を表彰し、将来レスキュー工学を担う若手の研究者を奨励する賞である。阪神・淡路大震災で亡くなった、当時神戸大自然科学研究科博士前期課程1年の竸基弘(きそい・もとひろ)さんにちなんで設けられた。
開会の挨拶では国際レスキューシステム研究機構会長の田所諭さんが登壇し、「阪神・淡路大震災が起こった当時は人命救助をした学生がたくさんいたが、テクノロジーは一つもなく、肉体で頑張るしかなかった。多くの人たちがこの問題に対して、何かをしないといけないという思いで草の根から取り組んだというのがレスキューロボットの世界だった。」と振り返り、「まだ技術的に足りないことだらけで研究開発、社会実装を進めていく必要がある」と話した。
学術業績賞には、災害時にけるロボット操縦者の負担を減らす操作支援システム、制約環境下でのドローンの性能評価法を開発するという、「災害対応ロボットの操作支援と性能評価」の研究で佐藤徳孝氏(名古屋工業大学准教授)が選ばれた。
技術業績賞は、プロペラによって騒音が出るドローンに聴覚を持たせて、助けを求める声を感知するという「アクティブドローン聴覚の実機実証とドローン聴覚の新展開」の研究でYen Benjamin氏(東京科学大学特任助教)が受賞。
今年は、5年に一度選ばれる医学部門業績賞、心理学部門業績賞も発表された。
医学部門業績賞には、国内外で災害医療支援を効果的に実施し、2024年1月1日の能登半島地震において高齢者を124時間後に救出するなど、「災害医療および国際支援活動を通じた被災者支援と医療体制強化への貢献」が評価され、稲葉基高氏(特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン 空飛ぶ捜索医療団ARROWSプロジェクトリーダー)が選ばれた。
心理学部門業績賞は、被災地での子どもの心理教育プログラム、新型コロナウイルス感染症におけるストレスや嗜癖行動の変化とトラウマの関連を明らかにするなど、「災害時におけるストレスとトラウマについての心理教育の実践とその研究」が評価され、永浦拡氏(北海道教育大学准教授)が受賞した。
奨励賞として、ロボカップジュニアIRS賞には『たのロボ!』(岐阜工業高等専門学校)、レスキューロボットコンテスト奨励賞には『 S.S.S.S 』(大阪工業大学学生・社会人合同チーム)、レスキュー工学奨励賞には「深層強化学習を用いた未知な不整地上でのレスキューロボットの自律走行」の研究で松尾颯人(名古屋工業大学)が選ばれた。
(写真:奨励賞の受賞者たち)
閉会の挨拶では競基弘賞選考委員会の松野文俊委員長(大阪工業大学特任教授)が登壇。震災当時は竸さんの所属する研究室の助教授であり、竸さんとの思い出と当時の状況を語った。
(写真:登壇する松野文俊委員長)
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非常に明るく活発な学生で、人に役立つようなロボットを作りたいと言っていた。
私は当時大阪に住んでいていたが、1月17日の早朝に大きな揺れを感じた。テレビをつけたが情報が全くない。少しまた眠った後に起きてテレビをつけると、どんどん情報が入ってきて、これはすごいことになっていると分かった。有線の電話でかけても全く電話がつながらない。
翌日、阪急電車が西宮北口まで通るようになった。神戸大に向かおうと電車に乗っていると、尼崎のあたりから家屋が倒壊している光景が見られた。映像で見るものとは全く質感が違う。
西宮北口から徒歩で大学へ向かうと、道が陥没、隆起して、家が倒れて道をふさいだりしていた。線路の上を歩いていると、ある神戸大生から「竸君は大丈夫です。下敷きになった一階から這い出てきて、負傷したおばあさんを病院に運んでいました」て、彼は大丈夫なのだと思った。
しかし何日後かに、誰からの電話か覚えていないが、「竸君が亡くなった」と。いやそんなはずはないと言ったが、「ご両親が確認されました」と伝えられた。全く受け入れられることができず、失望感を感じた。三宮で死亡診断書を受け取り、名古屋の彼の実家に向かいご両親にお渡しした。3月の終わりごろ、竸君が住んでいたアパートが取り壊されて更地になったのを見て、私に何ができるだろうかと考えるようになった。
今ではレスキューロボットが認知されるようになってきたが、現地で支援をしていくことが一番重要だと改めて認識した。現場で活用できるロボット、システムをつくっていかなければならない。単に工学技術だけではなくて、医学、心理学とも協力していきながら安心、安全でくらせる社会をつくっていきたい。
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了
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