6月下旬、深江キャンパスにある、白い大屋根の「スポーツ・フィールド」の下で、カーンと軽く乾いた音が響く。神戸大学ウィッフルボールクラブKWCの選手、約20人が立命館大のチームと練習試合をしていた。2月の全国大会で優勝してアメリカに招待されたが、渡航費を工面するためクラウドファウンディングを8月14日まで募っている。<加藤万由里、伊藤 望>

(写真:ネットなどの道具をセットする部員。ピッチャーは手前の黒い枠の「Kゾーン」という的に向かってボールを投げる 2025年6月29日午後 深江キャンパスのKOBE UNIVERSITY SPORTS FIELDで)
6月下旬、深江キャンパスにある、白い大屋根の「スポーツ・フィールド」の下で、カーンと軽く乾いた音が響く。神戸大学ウィッフルボールクラブKWCの選手、約20人が立命館大のチームと練習試合をしていた。
2月の全国大会で優勝してアメリカに招待されたというので、取材に行ってみると、深江キャンパスの正門で、プロジェクト・マネージャーの柴田航さん(農・4年)が出迎えてくれた。
神戸大学ウィッフルボールクラブKWCは2023年10月に設立されたばかりという。さっそく、取材班は去年4月にオープンしたテント張りの施設「KOBE UNIVERSITY SPORTS FIELD」に案内された。
ウィッフルボールは、野球に似たスポーツで、運動経験のない人でも気軽に始められるスポーツだという。もともと自宅の庭で、子どもと手軽で安全に野球をするために1950年代にアメリカで考案されたというスポーツだけに、グラウンド上には、投手とわずかな守備陣、そして攻撃側には打者だけがいる。

(写真:投手と打者だけをみていると野球のように見えるが、フットサルコート2面分あればゲームができる)
▼プラスティック製のボールとバット 野球に似たルール
ルールは野球に似ている。プラスティック製のボールを投手が投げ、同じくプラスティック製のバットで打者が打つ。打ったボールの落ちた位置で、進塁数が決まる。一番遠いエリアはホームラン、投手の周りはシングルヒット。仮想のランナーが進塁するので、ランナーは出ない。
ボールは24グラムと軽くて、半球に8つ穴が空いているので、変化球を投げやすい。プレー中も、大きく弧を描いて球が落ちる場面があった。
ボールとバットあわせてもそれほど経費がかからないという。野手が3人いればよいので、1チーム4人そろえば試合ができる。

(写真:プラスティック製のバットとボール。バットは、こどもの玩具とかわらない感触。ボールの半球には8つの穴があいていて、風の抵抗で球筋が変化する)
▼スポーツ初心者でも気軽に楽しめる
神戸大学ウィッフルボールクラブKWCは、1年半前、野球観戦サークルのメンバーだった柴田さん、安達潤さん(文・4年)、加藤佑真さん(海洋政策・4年)、藤井祐希さん(工・4年)ら4人が、同好会の仲間内で始めたところ、面白さに気づいてクラブを立ち上げようと動き始めた。同好会(非公認団体)の位置付けで、現在部員は、4年生4人、3年生4人、2年生9人、1年生11人と、どんどん増えている。
今春入部した柿本周真さん(営・1年)は、小学校から高校まで球技を続けていたという。「野球に比べてボールを曲げる難易度が低いので、簡単に球筋が曲がるのがとても楽しい。上下関係を尊重し合うけれど運動部独特の重苦しさがなくて、雰囲気がとても良くて楽しい」とにこやかに話してくれた。そういえば、試合中も大声を張り上げることはないし、みんな優しそうな男子ばかり。
中学、高校と生物•化学部だったという柴田さんは、「運動部は運動ができる人が集まっていて抵抗感があったけど、運動ができない自分でも優しくしてくれた。この人たちだったらチーム組んだら楽しそうだなと思った」という。「スポーツ初心者でも取り組みやすく、高みも目指せる。これが新興スポーツならでは」と、その魅力を語る。

(写真:わきあいあいの神戸大学ウィッフルボールクラブの部員)
▼立命、北大、東京学芸大などにもチームが
そんな気軽にできるウィッフルボールは、いま、じわじわ日本でも広がっているという。
関西では、神戸大のほか、立命大、大阪物療大(堺市)でチームが結成されている。ほかに、東京学芸大をはじめ、文教大(埼玉)、北大、宮城教育大にもチームがある。
ペットボトルのキャップを打ち合う「キャップ野球」のサークルからの参入や、複数の大学の連合チームもあって、ニュースポーツだけに全国大会は戦国時代の様相。
去年2024年の全国大会では、神戸大は東京学芸大に敗れて4位に終わったが、今年2月に埼玉県の文教大で行われた全国大会で神戸大は見事優勝した。

(写真:「絶賛部員募集中です」と、加藤キャプテン)
▼10月の米国世界大会に招待されて クラファンで渡航費を募る
この日本一の結果を知って、アメリカの組織「ユナイテッド・ウィッフルボール」から、6月中旬、「ペンシルベニア州で10月に開催される米国世界大会UWIFFに出場しないか」とオファーがあった。
遠征資金が足りないためこのほど、クラウドファウンディングで資金180万円を募ることになった。一口1000円から。8月14日まで。
クラファンの詳細は、https://camp-fire.jp/projects/861431/view を参照。
キャプテンの加藤佑真さんは、「新入部員の獲得やウィッフルボールの普及のため、毎週試合のリールを、インスタグラムにあげているのでみてください」とアピール。クラファンでの支援と共に、引き続き、競技人口の裾野を広げることへの意気込みも語ってくれた。
(写真下:クラファンのサイトのスクリーンショット)

●神戸大学ウィッフルボールクラブ(インスタグラム)=
https://www.instagram.com/kobe_wiffle_2024?igsh=MW1pdHYxcm9qdjQ1Mw==
●日本ウィッフルボール協会(サイト)=
https://www.japan-wiffleball-association.org
●Wikipedia「ウィッフルボール」=
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィッフルボール
了
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