80年前に終戦を迎えた太平洋戦争。神戸大の前身校の校地も、米軍から爆弾や焼夷弾、機銃の攻撃を受け、医学部、工学部、海洋政策科学部の前身校の敷地や施設も炎上し、学生・生徒・職員の尊い命が失われた。神戸大学大学文書史料室の資料をもとに、その記録をたどる。<編集部>
●1945年3月17日 未明
兵庫県立医学専門学校の校舎と同附属医院の一部が焼け、看護師1名死亡
神戸工業専門学校は、ほぼすべての校舎が全焼

(写真:空襲を受ける前の兵庫県立医学専門学校 1944年 神戸大学大学文書史料室提供 )
3月17日未明には、神戸の西部から中央部にかけてが大規模空襲にさらされ、楠(現在の中央区楠町7丁目)にあった校舎と附属医院、それに西代(現在の長田区水笠通1丁目)にあった神戸工業専門学校の校舎が焼けた。
『神戸医科大学史』(1968年3月25日発行)には、基礎校舎2階3階の西側部分402坪、木造病院8棟568坪を焼失と記録されている。「消火活動中の看護婦が直撃弾により殉職した」との記載も残る。
戦争末期の村上清副院長の随想も掲載されていて、「焼夷弾をばらまかれた時を予想して、消火演習を試みたところ、水道の圧力が低下してポンプの水は2階までもとどかぬことを知り、これでは全く役に立たぬというので、木造の病棟の入院患者を、鉄筋の病棟に無理につめ込んで移しておいた。(中略)木造病棟は全部灰燼に帰したが、其処には患者が1人も居なかったので、1人も患者に死傷者を出さなかった」「三宅清子という若い看護婦が、焼夷弾の直撃をうけて殉職したことは痛恨の極みであった。併記して、ひたすらに冥福を祈りたい」とある。
(編集部注:原文のまま掲載しています)

(写真:ありし日の神戸高等工業学校の校舎 1943年ごろ 神戸大学大学文書史料室提供 )
一方、『神戸大学工学部五十年史』(1971年12月5日発行)には、「土木科本館、建築土木実験室、機械科鋳物工場、機械科ボイラー室、化学教室、図書庫、車庫を残して、西代の一角に二十五カ年の歴史を誇った赤き甍の本館をはじめ、大講堂、科学工業博物館、建築、電気、機械、精密機械の各科教室および実験、実習場並びにその内部の施設大半を一朝にして灰燼に帰した」と記されている。「空襲は午前四時五十分頃ようやく敵機が退去したが、本校運動場だけで焼夷弾三百六十発以上が投下され、機械科グライダー室の西横に爆弾が落下した」という記述から、空襲のすさまじさがしのばれる。
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(写真:空襲を受け炎上する神戸工業専門学校の校舎 1945年3月17日 神戸新聞社提供 )
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●1945年5月11日 朝
高等商船学校神戸分校校地に爆弾投下 職員2名、生徒2名死亡
5月11日朝に、海軍用航空機を製造していた深江の川西航空機甲南製作所が爆撃目標となった空襲が行われた。隣接していた高等商船学校神戸分校・海技専門学院・短期高等海員養成所の学生寮、教室、実験室なども全焼。焼け残ったのは本館・機関工場等のわずかな建物のみだった。
(画像上:Googleマップ 現在の神戸大学深江キャンパスを見ると、すぐ西側に隣接して新明和工業 航空機事業部甲南工場があるのがわかる。当時は、海軍用航空機を製造していた川西航空機甲南製作所だったため、この付近は米軍の攻撃目標となった)
『神戸商船大学50周年記念誌』(1971年9月20日発行)には、「この日は雲量が多く、かつ雲も低くてB29の機影は午前九時五十四分、急に深江上空に現われ、川西航空機甲南製作所を爆撃針路に入れて南西から北東へと本校校地を斜断しつつ、実に1838発の高性能200キロ爆弾を次々と投下したのである。(中略)本校々地内にも判明しただけで36発の被弾があり、赤煉瓦建の本館および機関工場の一部を残して、学生寮の全施設と教室、実験室などが爆砕あるいは続いて発生した火災のため全焼してしまった」とある。
人的被害については、「学校職員の大工、ボイラー・マンや第四短期学生の中に犠牲者を出したほか、職員家族にも爆死者を生じた」。「当日の空襲下にたまたま御真影の警衛のために配置についていた専科(第四短期高等海員養成所)の生徒2名が、落下した至近弾の爆風で約20メートルも吹き飛ばされ、着剣した銃を握りしめたまま責務に殉じていた」と、記録されている。
遺体は高橋川に臨む東の浜で、教官・学友の手によって茶毘に附されたとも記されている。

▼連載【終戦80年】空襲下 キャンパスで失われた命 <リンク>
<1> 小型爆弾投下 旧国維寮で学生が死亡
<2> 深江校地は36発被弾 遺体は浜で茶毘に附された
<3> 猛火を逃げ惑う寮生、登校中に命落とした仲間
<4> 洋上の練習船にロケット弾 6人が爆死
<5> 終戦間際にも焼夷弾攻撃、焼け落ちた煉瓦造り
つづく
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