百年記念館１階展示ホールで神戸大学史・特別展「戦場に行った神戸大学の学生たち－戦後８０年－」が１２月５日（金）まで開催されている。平日は９時３０分から１７時、土曜日は１０時から１６時まで開館。日曜・祝日休館。入場料は無料。日中戦争や太平洋戦争に青春を奪われ、戦地に行かなければならなかった当時の学生に関する記録や遺品が展示されている。今回の特別展について神戸大文書資料室の野邑理栄子さんに話を聞いた。＜成瀨 泉＞

（写真：終戦80年「戦場に行った神戸大学の学生たち」展の会場　2025年10月31日午前　百年記念館1階ホールで）

　神戸大学史・特別展「戦場に行った神戸大学の学生たち－戦後８０年－」が百年記念館１階展示ホールで１０月２３日（木）から１２月５日（金）まで開催されている。日中戦争や太平洋戦争に巻き込まれ、普通の学生生活を送れなかった学生たちとその親に焦点が当てられている。

　今回の特別展では、展名に「学徒出陣」の言葉が使われていない。野邑さんはその理由を「『学徒出陣』がなされる前、つまり日中戦争の時から戦地に行かなければならない学生はいた。今回の特別展ではそんな学生たちにも焦点を当てているため、『学徒出陣』という言葉は使わないのが良いと考えた」と明かした。

　パネル展示では、日中戦争から振り返り、学生が戦地に行かなければならなくなるまでの戦争と社会の流れを見ることができる。
　また戦死した学生たちの手記の一部が展示されていて、そこには戦地で直面した学生たちの思いが残されている。その他にも、戦地に赴く学友に送った寄せ書きや、戦死した学徒兵が母親に贈った草履なども展示されている。

（写真：実名入りで展示されている戦死した学生の写真　百年記念館1階ホールで）

　今回の特別展で一際目をひくのは、学徒出陣で実際に戦地に赴きそこで戦死した神戸商業大の学生の顔写真だ。６７人の学生たちの顔写真・名前・年齢・戦死した場所が記載されているが、なかには顔写真や年齢が記録に残っておらず、不明のままになっている人もいる。野邑さんの話によると、写真を見て涙する年配の女性や、学生が戦地で亡くなった事実に憤りをこらえきれない来場者もいたという。

（写真：出征する学生に対して学友が書いた寄せ書き　日の丸の旗にぎっしり書き込まれている）

　野邑さんはこの展示には学生たちへの追悼の意味が込められていると話す。「今回、神戸大として何らかの形で追悼したいと考え、彼らの実名を表示することにした。名前を出すことに大きな意義があるのではないかと思う」と心の内を明かした。「戦後から８０年経って彼らのことを知っている人はほとんどいなくなった。そんな今だからこそ、若い学生が戦地に行き亡くなったという事実を今の人に知ってほしい」と力強く語った。

　野邑さんは「当時の学生は戦地に行きたくなくても拒絶することができなかった。ＮＯと言うことができなかった時代を生きた学生たちのことを知ってほしい。学生の皆さんもぜひ来て、こんな先輩たちがいたということを知ってほしい」と神戸大生に向けてメッセージを送る。

（写真：学生課の綴りにとじられている、親から大学に送られてきた「死亡報告」）

　特別展は、１０月２３日（木）から１２月５日（金）まで、平日は９時３０分から１７時、土曜日は１０時から１６時まで開館。日曜・祝日休館。入場料は無料。

《令和７年度　神戸大学史・特別展「戦場に行った神戸大学の学生たち－戦後８０年－」》
●期間＝１０月２３日（木）から１２月５日（金）の平日・土曜日（日曜日・祝日は休館）
●時間＝平日は９時３０分から１７時、土曜日は１０時から１６時
　　　 （１０月２５日（土）は９時３０分から１７時）
●場所＝神戸大学百年記念館１階展示ホール［地図］
●主催＝神戸大学大学文書史料室
●料金＝無料
●問い合わせ先＝神戸大学大学文書史料室
（電話）０７８－８０３－５０３５
（メール）archives[at]lib.kobe-u.ac.jp
※メールを送信する際は[at]を@に置き換えてください。
●公式サイト＝ https://lib.kobe-u.ac.jp/archives/13179/

（写真下：大学の校章を形どった千人針＝手前）

了