◎阪神、東日本、そして未来へ

 阪神・淡路大震災から20年を目前にして、シンポジウム「大震災を踏まえた教訓と課題~次世代へつなぐ~」が9日に六甲台講堂で開かれた。震災復興支援・災害科学研究推進室が主催し、神戸大や東北大の災害研究者6人が講演。パネルディスカッションも行われ、防災、減災、被災地復興に今後の災害研究がいかに貢献できるか、研究者らがそれぞれの専門分野から意見を交わした。

 冒頭に福田秀樹学長、里見進東北大総長らがあいさつ。その後、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長を務める五百旗部真氏(神戸大名誉教授)が、阪神・淡路大震災と東日本大震災での政治対応の違いについて基調講演した。

 災害研究者の講演には自然科学、社会科学、人文科学のさまざまな分野の専門家が登場。住宅政策が専門の近藤民代准教授(工学研究科)は、東日本大震災で新たに問題となっている被災者の住宅再建の遅れや居住地移転に触れ、南海トラフ地震に備えた持続可能な市街地整備が必要と唱えた。津波工学の第一人者である今村文彦教授(東北大)は、過去東北地方で起こった津波被害の正確な記録を目的とした文理相互の研究者協同、防災と減災に向けた災害データベースの活用、地域に応じたバリエーション豊かな避難訓練の取り組みを紹介した。また歴史学者の吉川圭太特命講師(人文学研究科)は、阪神・淡路大震災以降の災害資料と災害によって破損した歴史資料2つの保全活動から、災害を地域の歴史として未来に継承していく手法を講演した。

 後半のパネルディスカッションでは「各分野の研究はどう災害対策に役立つか」について議論。「個別の災害ごとの課題の違いに目を向けることが大事」「自然科学中心ではなく、社会科学や人文科学も災害が人にもたらす影響にフォーカスし、学際的に災害研究を行っていかなければ」といった意見が飛び交った。

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