海事科学部硬式野球部の新監督に2月1日、元阪神タイガースの鎌田実氏が就任した。公式戦30連敗中のチームが「鎌田マジック」によってどう変わるのか。鎌田監督に話を聞いた。【3月21日 神戸大NEWS NET=UNN】
30連敗。この記録的な数字を聞いたとき、鎌田監督に驚きはなかった。「あの人数ならしょうがない」。
部員は18人いるが、海洋実習や研修で大半が練習に参加できない。もともと、海事科学部に所属する部活は海事科学部生のみしか入部できないため、部員集めはひと苦労だった。さらに昨年、大学からの支援が打ち切られ、年間70万円以上の大会費や、用具費を部員のアルバイト代でまかなうように。練習参加率はますます落ち込み、活気がなくなっていった。
そんな練習風景を、芦屋に住む鎌田監督は何度も見かけていた。「あんな人数で何してんねやろ」。気になって話を聞いてみると、部活動だという。
また、試合に足を運べば見たことのない選手がいる。「君はどれぐらい練習してないんや」。「1か月です」。こんな選手が何人もいることを知り、驚いた。
「自分はプロだったから、お金をもらって野球をするのが当たり前だった。だけど彼らは、お金を払ってまで野球をやりたいと言っている。そんな姿勢に感動したし、ほっとくわけにはいかなかった」。阪神時代の鎌田監督を知る土地コーチの打診を引き受けた。
昨年1年間「客」として練習や試合を見てきた中で、鎌田監督が見つけた課題は練習量と人数。そこでまず、練習日を週2回から週6回に増やした。人数が一番多く集まる曜日が火曜日と木曜日だったため、その2日しか練習をしていなかったが、その他の曜日も自主練習に充て、1人でも監督自ら指導するようにした。
また、人数不足を解消するための方法として、地元の中学生が練習に参加できるようにした。すると、平日でも15、6人、休日なら40人以上の中学生が集まり、今まで閑散としていたグラウンドに活気が生まれた。選手側からすれば、鎌田監督の教えを中学生に伝授する中で改めて多くのことに気づくことができる。
さらに監督は、選手らのプレー面とは別の可能性にも期待する。「うちには理論的な人間が多い。今彼らに指導力を身につけさせれば、(部員らが)将来海外へ出たときに野球を広める役割を担える。彼らが伝道師的な存在になって、野球がもっと多くの国で盛んになってくれれば」。
とはいえ、やはり当面は結果を出すことが最優先だ。選手らについて「練習すれば、7、8人は(阪神学生野球リーグ)3部でも十分通用する」と監督は話す。取材中、バッティング練習を始めた部員の1人を見て、「バッティングが力強くなってきた」と喜ぶ場面も。
選手は鎌田監督をどう思っているのか。林田主将(海事・2年)は「本物の野球を知っているので信頼している。がみがみ言うタイプではなく、的確な言葉で導いてくれる」と話す。チームについては「うまくいっているのかはまだわからないが、環境が良くなり、モチベーションも上がった。野球が楽しくなった」と変化を感じている。
「目標はきちんと9回まで試合をすることやな」と話す鎌田監督。新入生の獲得や、現有戦力のレベルアップなど課題は山積みだが、「鎌田マジック」に期待は膨らむばかりだ。まずは3月29日、今季初の練習試合・対兵大戦で真価が問われる。
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