5人が犠牲となった神戸市灘区の都賀川水難事故から、7月28日で1年を迎えた。事故現場に近い灘区の甲橋付近の広場では、「犠牲者を偲(しの)ぶ会」が行われた。6月に都賀川公園で行われた「灘チャレンジ2009」の実行委員を務めた神戸大の学生らも参加し、黙とうを捧げた。【7月30日 神戸大NEWS NET=UNN】?
平成20年7月28日。午後2時半過ぎから上流の市街地に降り注いだ雨が都賀川に流れ込み、濁流となって川辺にいた市民を飲み込んだ。中には救助され一命を取りとめた人もいたが、子ども3人を含む、5人が犠牲となった。
<7月28日を「子どもの命を守ろう日」に>実行委員会の谷口美保子さん(50)あいさつで始まった偲ぶ会。集まった参加者らが黙とうを捧げたあと、地元中高生が都賀川に向かって歌声を響かせた。献花や記帳に訪れた参加者の中には、涙を流す人の姿も見られた。
「1年が早かったのか遅かったのかもわからない」と谷口さん。事故を忘れさせないため、今年1月から慰霊碑設置を訴える署名活動を始めた。6月に集まった約5000人分の署名を神戸市に提出。事故が起きた7月28日を、「子どもの命を守る日」にすることも求めている。今も通勤などで都賀川を通るという谷口さんは「毎日考えない日はなかった。忘れることはない」。そして、「毎年伝え続けていきたい。(伝えることが)事故を起こさないことにつながる」と、活動を続けることの大切さを訴えた。
今年6月、都賀川公園で行われた市民祭「灘チャレンジ2009」では、学生らが水難事故を検証し、まとめたものをパネルとして展示した。会場には同じパネルが展示され、訪れた人が足を止めて見入っていた。
パネル作成に関わった灘チャレンジ実行委員会の久保久彦さん(理・4年)は「子どもも大人も『都賀川』を考えてほしい。川は楽しいものだが、自然の中での怖さや危なさを再認識して、川とどう付き合っていくかを住んでいる人たちにもう少し考えてほしい」と呼びかけた。
○利用者の意識向上が課題 事故調査団・藤田教授 工学研究科で河川工学を研究する藤田一郎教授は、土木学会都賀川水難事故調査団の団長として水難事故に関わった。
藤田教授は「1年が経つのは早い。(事故は)信じられない」と振り返った。短い時間とはいえ、1時間に換算すると100ミリを上回る雨量。降り始めから10分ほどで急激に増水し、1秒間に最大で約40トンの水が都賀川に流れた。「事故を想像できなかった。新たな視点として考えていかなければいけない」。50年に1度といわれる豪雨が、尊い命を奪い、そして契機となった。
天候の変化だけではなく、都賀川が親水空間として住民に受け入れられていることが、人を巻き込んだ事故につながった。事故発生後、全国の親水施設で調査が行われた。都賀川では降雨・増水の危険を知らせる警報装置が設置されたが、「まだ十分には浸透していない」と藤田教授。雨が降り、警報装置が点灯しても、河川敷を歩いている利用者もいるという。「(利用者の)河川への意識の問題。(歩道にいても)川底にいるという意識を持たなければいけない」。小さな子どもや転居してきた人は川の危険性を知らずに利用していることが多い。啓発用の教材を使った教育や教職員へ研修を行い、川の危険性に対する意識を高めることが必要とした。
現在、神戸大の学生を対象とした啓発活動は行っていないが、「(利用の際は)気をつけてもらいたい」と注意を促した。
神戸大から近い場所にあり、桜が咲く季節や夏休みには多くの学生が訪れる都賀川。悲惨な事故を防ぐためには、利用者が正しい情報を身につけ、自然の一部として川と付き合うことが必要だ。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。