近畿学生野球秋季リーグ第3節3回戦、神戸大-阪南大が10月15日に舞洲ベースボールスタジアムで行われた。神戸大は延長10回に金川(発達・3年)の中越適時打で勝ち越し、エース安井(経営・4年)が阪南大打線を完封。1-0で接戦を制し、最終成績を8勝3敗1分の勝ち点4として6年ぶりの2位に躍進した。【10月16日 神戸大NEWS NET=UNN】
大学最後の試合で生涯最高の投球だった。1点リードで迎えた延長10回二死。安井はマウンドの頂からナインを見渡し、胸の中から込み上げてくるものをぐっと堪えた。一塁では主将の下濱(経済・4年)が涙を流している。カウント2-2から最後の打者をスライダーで左飛に打ち取ると、ベンチから全選手が飛び出して歓喜の輪ができた。
「もう後がなかったので、最後に全部出し切るつもりだった。野球の神様が見てくれていた」。安井はマウンドに駆け寄ってきた捕手の河嶋(経済・4年)と抱き合った。
奈産大に連敗し、チームとしてモチベーションが下がった時期もあったが、6年ぶりの2位奪取へ向けて気持ちをすぐに切り替えた。奈教大に2戦連続でコールド勝ちし、この日の阪南大戦に全てを懸けていた。
エースの左腕を信じて使った。対戦チームの中で最も阪南大との相性が悪い安井を先発で起用することに、一部では疑問視する声もあった。それでも中村監督は譲らなかった。「僕の中では安井しかなかった」。
大学から硬式野球を始めた背番号16は指揮官の期待に応えた。今まで一度も勝てなかった強力打線に対して強気に内角を攻め、延長10回を3安打零封。6回には一死満塁のピンチを迎えたが、遊撃手北野(発達・4年)の好守にも助けられ、本塁と三塁でダブルプレーに仕留めた。
実は中学時代に愛知県で準優勝した経験があることはチームメートには秘密にしていた。「受験とかもあって高校で野球やってないのに口にするのはちょっと」。だが、もう隠す必要はない。「引退するんで、ちょっとずつ言っていこうと思う」と安井は文字通りのラストスマイルを浮かべた。
●引退する4年生の声
一塁手・下濱主将(経済・4年)、「優勝なくなったっていうモチベーションの中で2位になれた。9回一死くらいから泣いてた。安井はすごかった。捕手の河嶋が相手の苦手なとこを上手く突いていた。ベンチの雰囲気がここっていうときに良かった。来年のチームにいえることは野球の実力をつけてくれたら勝負できる」
正捕手・河嶋(経済・4年)、「安井が最高のピッチングしてくれた。勝ってうれしいけど終わりっていう不思議な気分。今年の春合宿で左手親指の付け根を骨折して、学生コーチになろうかと考えた。でも、同期に『お前がキャッチャーでいてくれ』って言われたのが嬉しかった。選手としてやってきて良かった。4回生のみんなは人間として尊敬できる奴らだった」
遊撃手・北野(発達・4年)、「1年で入ったときから3位が定位置になってて、最後はほんまにアウトにしたら2位になるんやなと不思議な気持ちだった。優勝がなくなってからは阪南戦一本で、みんなで阪南に向かっていく気持ちになっていた。4年間、短かったか長かったかわからない。神大が強くなっていく流れに乗れたのが一番良かった」
二塁手・米家(発達・4年)、「10回は泣きそうな感じになった。そういう感じになったのは初めてだったので、来たボールをしっかり捕ろうと思った。もともとピッチャーだったけど、去年の春終わってから自分の適正を考えてセカンドに転向した。安井も下の学年のピッチャーも良かったので、ピッチャーとしては諦めた。正直なところ最後まで続けてよかった」
代打の切り札・福原(海事・4年)、「最後の守りではうるうるきてた。勝った瞬間、ベンチから一番初めに飛び出してメガホンとか投げてた。中村監督からはチャンスがきたら出すぞと常に言われてて、一発勝負には慣れてるんで今シーズンは持ち味を生かせていけた。大学に入ってからプレーヤーとして野球の奥の深さを教えてもらった。やっててよかった」
声出し屋・安藤(経済・4年)、「みんながいたから楽しかった。奈良大と奈教大戦で2打席打席に立ったが、センターフライとサードゴロだった。燃えたんですがね。打ちたかったですよ。続けてこれたのもみんながいたから」
●近畿学生野球秋季リーグ第3節3回戦(10月15日・舞洲ベースボールスタジアム)
神戸大 000 000 000 1=1
阪南大 000 000 000 0=0
【神戸大】○安井-河嶋
【阪南大】●萬谷-今井
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