気になる就活問題(1) 金融危機の影響

2010年春に卒業予定の大学3年生は本格的に就職活動を始める季節。これから社会への第一歩を踏み出す神戸大生にとって頭を抱える問題を、多くの企業とつながりがある神戸大キャリアセンターでセンター長を務める内田正博教授に聞く。第1回は「金融危機の影響」。(全2回)【11月4日 神戸大NEWS NET=UNN】

 金融危機は昨年8月に米国で起きたサブプライム問題を発端とする。住宅バブル崩壊によりサブプライムローン(低所得者向けローン)を組み込んだ証券化商品の価値が下がったことで損失を抱えた金融機関が貸し渋り、今年9月に米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破たんするなど、信用を前提に資金を融通し合ってきた金融市場が機能不全に陥った。
 この米国発の金融危機により世界規模で景気の減速が懸念されている。日本では金融業界だけでなく、株暴落と円高により日本経済を支える輸出産業の業績も悪化している。(10月29日現在)

-就職活動に金融危機はどのような影響が出ると予想しますか。
 不景気になると思われるので、あらゆる企業で余剰人員が発生すると思われます。そうなると、必然的に採用者数は減るでしょう。

-その予想の理由は。
 すでに東京のある高校では求人数が3分の1に減るなど、影響が出ています。また、今年行われた秋・夏採用の求人数は昨年より減っています。また、最近の新聞報道によれば、他大学では内定取り消しなどの深刻な事態も起こっているとのことです。3年生や修士1年生の就職活動にもこれらから影響が出ると思います。

-特にどの分野で金融危機の影響が及ぶと思われますか。
 不景気はあらゆる分野に拡がるでしょう。とりわけ金融業界、不動産、輸出産業に影響が出ると思います。(後者は)国外に市場があるので。

-学生からはどのような声を多く聞きますか。
 (金融危機について)ごく一部ありますが、まだあまり声を聞きません。社会的関心がないことを心配しています。

-アドバイスを行っていて、気になっている点などありますか。
 昨年より学内で行うセミナーなどの参加者が多くなっています。金融危機関連のニュースがテレビなどで連日報道されるため、学生は無意識のうちに不安に駆られているのかもしれません。

-このような状況でどのように就職活動を行うべきですか。
 まずは新聞などを読んで社会的関心を持ってほしいですね。後は、就活のノウハウを本から学ぶだけではなく、自ら学ぶ力を身につけてほしいです。これからは、卒業して社会人になれば持続的学習能力がますます必要になります。資格取得は最優先課題ではありません。大切なのは夢や目標を持つことです。10年、20年たてば会社はどうなっているのかわかりません。自分のやりたい仕事を見出し、他の会社からも来てほしいと思われるような自立可能な能力を身につけてください。また、企業から選ばれようとするだけではなく、自分が企業を選ぶという自信を持つことができるようになってほしいと思います。

  第2回に続く

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