家族支えた署名の力 大日岳訴訟を終えて

大日岳で冬山登山研修会に参加した溝上国秀さん(当時・神戸大2年)ら2人が雪庇(せっぴ)崩落によって死亡した事故の裁判。遺族側の勝利和解が成立した要因の一つには、30万の署名による遺族への後押しがあった。【9月3日 神戸大NEWS NET=UNN】


 裁判後の8月4日、国の代表者が溝上さん宅を訪れた。溝上さんの両親への謝罪に加え、国秀さんの遺影に手を合わせた。「国が遺影に謝罪するケースは極めて異例」と国秀さんの父・不二男さん。和解の要因については母・洋子さんと「署名の力」、と声を合わせる。
 遺族に謝罪することを国に求める署名活動は4年を超えて続けられた。協力を求め各地で頭を下げる日々。インターネットでも協力を呼びかけた。署名の提出回数は13回、集まった数は30万2588筆にも及んだ。
 もちろん誰もが署名活動の協力に積極的だったわけではない。「(署名への協力を求めた際に)涙を流したくなるようなひどいことも言われた」と不二男さんは振り返る。それでも「(活動を)やってきてよかった」と続ける。
 遺族側の完全勝利内容で和解が成立したこと。「普通なら10年」と言われる国相手の裁判が7年で終了したこと。「署名のおかげで国はどうにもできなくなったのかもしれない」と不二男さん。異例尽くめの裁判結果は、署名が導いたものだった。
 「120パーセント勝利」の和解内容には30万人の思いが詰まっていた。

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