神戸大学大学院海事科学部の実習船「深江丸」が昨年10月で竣工してから20周年を迎えた。深江丸の船長で、一級海技士でもある矢野吉治准教授(やの・よしじ)に、海事科学部生たちへの指導の様子や学生たちへのメッセージを聞いた。【7月16日 神戸大NEWS NET=UNN】
矢野船長は海事科学部の前身の神戸商船大卒で、運輸省の出身。日本で22人しかいない海技試験官の免許も持つまさに「海の男」だ。10年前に深江丸の船長に就任してからは、多くの経験を生かして海事科学部生の指導にあたっている。「船上の実習は常に命がけ」と船長が語るように、海事科学部生の計12ヶ月に及ぶ海洋実習は時に厳しい状況に見舞われることもある。そんな状況にあってもぎりぎりまで生徒の判断に任せ、自身は生徒の後ろで簡単な指示を与えるだけの場合もある。任せられる側の生徒たちにとっては大変な実習だが、極度の緊張感の中で困難を切り抜けたとき、生徒たちは大きな自信をつけ、生徒同士の信頼関係を強められるからだ。
船の上で船長が生徒に最も望むものは「仁・義・礼」の三つ。漁船が多く、多くの海上ルートが複雑に入り組む日本の海の中で、瀬戸内海はとりわけ航行が困難とされている。実習はその瀬戸内海で行われている。船の上での実習は命を扱うからこそ、船長は、どの海の、どんな状況にあっても仲間同士での挨拶や礼儀、マナーの重用性を強調している。
「船長として大きな責任を負う分、誰にも相談できずに孤独を感じることもある」と話す矢野船長。そんな船長にとって深江丸はいつも共にいて言うことを聞いてくれる「恋人のような」存在だという。
また、今の学生たちに向けて船長は、「常にフロンティア精神、パイオニア精神を失わないでほしい。偏差値ではなく夢を持ってぜひ一度この深江丸に乗ってみてほしい」と話した。
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