「同じURLの更新」、「昨年のデータを残しながらの作業」、それを一人でパソコンに向かって行うこと。神戸大の合格発表ミス問題では、合格者の受験番号の更新作業が、危険な綱渡りで行われていたことが、次々に明らかになった。【3月15日 神戸大NEWS NET=UNN】?
《“影武者”サーバーが傷口を広げた》
多くのアクセスが集中する神戸大サーバーには、キャッシュサーバーという双子のサーバーが併設されている。元のサーバーのデータと同じデータを持ったもう1つのサーバーを用意し、集中するアクセスをさばくという仕組みだ。
今回は、これが裏目に出た。「10時1分に各学部のデータをほぼ同時にアップした。さらにキャッシュサーバーの更新に2分かかり、すべてのデータが今年の合格発表に更新されたのが10時3分だった」(入試課)。
キャッシュサーバーの情報が、メインのサーバーが更新されると自動的に連動して更新される設定だったのか、手動で更新する設定だったのか。大学は、「答えられない」(入試課)としている。
いずれにしても、キャッシュサーバーの更新時間「2分間」だけ、傷が広がった。キャッシュサーバーに接続されたのは330件だった。昨年のページを閲覧してしまった人は倍に膨れあがった。
結局、17年度データへのアクセス件数は計448件。何度もアクセスした人がいるので、「昨年度のページを見た人は約300人」(入試課)と推定されている。
《同一アドレス更新の危険性》
本来なら「各学部の合格発表掲載ページ」のアップを早めに完了させておき、「表紙のページ」からのリンクテストを作業用の手元のパソコンでローカルテストして、10時ジャストに「表紙のページ」アップ…。これが、アップ作業を経験した人間なら考える、ごく普通の作業。
なぜこうした手順を踏まなかったのか?
余裕を持って事前に作業しよう、という判断を鈍らせるある条件があった。それは、「同一のファイル」を更新する、という前提だ。
去年のアドレスを覚えている受験生は、10時より先に今年の発表をのぞき見る可能性がある。できれば、10時に一気にアップしよう…という心理に結びつく。
《たった一人で更新作業》
「うまく言えないけど最悪だと思う。入試担当者がもっと厳密に注意にしていれば防げたことだと思う」(経済2年・女)。
「パソコンをしっかり理解している人がやるべきではないのか」(文2年・女)。
入試課によると、ページを更新したのは40歳代の入試課の担当者1人だった。立会人もなく、1台のパソコンから一人で更新した。40歳代の担当者は「ネットの担当者」という。
10時5分。入試課、各学部に問い合わせが相次ぎはじめた。更新作業をしてほっとしていたはずのこの職員に「異常事態」が告げられた。
しかし、ネット上で確認しようにも、アクセスが集中して確認できない。
職員は10時5分、14分、17分、19分と、同一データの更新を4回くり返した…。
大学にとって最もデリケートな業務なだけに、外部のオペレーターにタッチさせることはできないだろう。しかし、ネットのアップ作業に詳しい職員を複数配置できなかったか?
アップ作業を理解した担当者をせめて2人配置して、1人はアップ作業、もう1人はサイドで手順ミスがないかチェックする。さらに、立会人を1人は配置して、外部からの問い合わせに対応する。こうすれば、慌ててパニックにもならないだろう。
手順マニュアルを確認しながら、時間に余裕を持って、複数の職員でアップさせていれば、ミスは防げたのではないか。
甲南大法科大学院・園田寿教授(情報法、刑法)の話
問題は、大学の管理体制。過去のデータを削除せずにサーバに残ったままの状態であったことと、URLが昨年度のものと同一であったという二重のミス。一般に、コンピュータに関連した不法行為や過失では、「被害の大きさ」、「被害が拡散する速度の速さ」、「操作の容易さ」などが特徴。人間はミスを起こすということを前提に、そのミスをカバーするような仕組みをあらかじめ講じておく必要がある。
神戸学術事業会・高瀬進取締役(ネット事業担当)の話
組織の理解不足が根幹にあると思う。システム担当のイージーミスという言い方をする人が多いだろうが、システムを取り巻くマネジメントが不足している。「ネットはわからん」と、特定の人に丸投げしていないか。これでは、ネットを担当する人がいなくなる。みんながネットを学び、人材を育てて、こうした業務に複数であたる必要がある。
▼アップ作業の時間経過
10時00分 【合格発表のindex(表紙)、PDFファイル(全11学部分発表データ)を入試課が同時に転送】 indexはすぐに反映される。サーバーに17年度の合格者一覧が残っており、 重いPDFファイルのページ反映に時間がかかったため、 17年度データが公開されてしまう。 01分 PDFファイルがページに反映。18年度データが閲覧可能に。 キャッシュサーバーの17年度データはこの段階では未更新。 03分 キャッシュサーバー内に18年度データが反映される。(アップ完了) 05分 学生からの問い合わせが始まる。 入試課が確認を試みたが、アクセス集中で確認とれず。 【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が2回目更新】 14分 受験生からの問い合わせ続く。 入試課がページ更新の確認とれず。 【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が3回目更新】 17分 受験生からの問い合わせ続く。 入試課がページの更新の確認まだとれず。 【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が4回目更新】 19分 受験生からの問い合わせ続く。 入試課がページの更新の確認とれず。 再度【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が5回目更新】 30分頃 入試課が、ページの更新の確認できる。
(HP合格発表ミス問題取材班)
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サーバーに17年度の合格者一覧が残っており、
重いPDFファイルのページ反映に時間がかかったため、
17年度データが公開されてしまう。
01分 PDFファイルがページに反映。18年度データが閲覧可能に。
キャッシュサーバーの17年度データはこの段階では未更新。
03分 キャッシュサーバー内に18年度データが反映される。(アップ完了)
05分 学生からの問い合わせが始まる。
入試課が確認を試みたが、アクセス集中で確認とれず。
【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が2回目更新】
14分 受験生からの問い合わせ続く。
入試課がページ更新の確認とれず。
【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が3回目更新】
17分 受験生からの問い合わせ続く。
入試課がページの更新の確認まだとれず。
【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が4回目更新】
19分 受験生からの問い合わせ続く。
入試課がページの更新の確認とれず。
再度【合格発表のindex、PDFファイル(全学部)を入試課が5回目更新】
30分頃 入試課が、ページの更新の確認できる。












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