マスターズ甲子園 大会支えた人々

Photo 高校野球経験者の誰もがあこがれる甲子園。全国の高校野球OBやOGが夢の舞台に立つ「マスターズ甲子園」が11月4日と5日、阪神甲子園球場で行われた。大会の開催は3年目。選手約650人が参加した大会は、多くの大学関係者にも支えられた。球場で出会った人々の声を伝える。【11月6日 神戸大NEWS NET=UNN】

Photo 「おとうさんがんばってー」。家族の声援を背に、OB選手はバッターボックスへ向かう。
 「普段は仕事で子どもに顔を見せていない。これ(大会で活躍すること)で父親らしいところを見せられるかな」と笑顔で話す31歳のOB選手は高校時代、甲子園出場を目指して野球に没頭した。「野球がなければ今の自分はなかった」と断言。野球へのこだわりは今でも強い。「あの頃かなえられなかった目標の舞台に立たせてもらった。それだけでもう夢のよう」。試合後、子どもを抱き上げて選手はそう話した。
 幅広い世代が参加した大会。選手である前に、大会出場者の多くは社会人として働いている。「だから練習はどうしても土日が中心になる。家族を犠牲にした分、きょうはお礼の意味でもいいところを見せたい」と話す選手は、仲間の適時打で生還し、ベンチを沸かせた。「この歳になって聖地甲子園で野球をやらせてもらえて嬉しい。まだまだがんばれることを実感した」。


【写真左】走者生還しハイタッチ。(いずれも11月4日・阪神甲子園球場で 撮影=森田篤)

・星野氏「行進見ただけで感動したよ」

Photo 開会式で「もう一度青春に帰り、ふるさと母校のために戦ってください」とエールを送った大会名誉会長の星野仙一氏は、代表OB第1試合を観戦。「やっぱり甲子園は違うね。行進を見ただけで感動したよ」と笑顔を見せた。選手の顔ぶれは30代、40代が多い。「(おなかの出た選手が)一生懸命足を上げ手を振り行進してたね。こちらにも野球への思いが伝わってきた」と振り返った。「甲子園のグラウンドは立った者より立てなかった者が多い。選手には野球を楽しんでほしい」と話した。

【写真】会見場で笑顔を見せる星野仙一氏。(11月4日・阪神甲子園球場で 撮影=森田篤)

・「いまの気持ちをお願いします」 学生ら、選手にインタビュー

Photo OB選手が甲子園で体感するのは試合だけではない。
 試合後、選手通路では神戸大、神戸女子大、甲南女子大などの学生らがメモとペンを手に選手を迎えた。「おめでとうございます」「いまの気持ちを教えてください」「マスターズ甲子園の魅力ってなんですか」。思い思いにインタビューしメモをとる。試合を終えた選手の声を記録として残すことが狙いだ。
 学生らをまとめる神戸女子大学の中山ふみ江教授は「生きがいや夢をもった選手の言葉を聞いて、自分たちの夢を膨らませてほしい」と説明する。学生が催し物を主催したり、スタッフとして裏方を経験したりすることは貴重な財産。「授業の一環で学生にインタビューをさせている。選手にも喜んでもらえるのでは」と話した。
 選手にインタビューした中島朋彦さん(国文・3年)は「(取材を通して)生の声を聞けたのが良かった」と笑顔。「自分の親世代がスポーツをしている姿をあまり見たことがなかった。選手と自分の父親(のイメージ)を重ねた」と感想を述べた。選手の印象については「プレーを終えた高揚感から、野球への思いを積極的に話してくれた」という。

【写真】試合を終えた選手にインタビューする学生ら。(11月4日・阪神甲子園球場で 撮影=森田篤)

・「学生にはスポーツの広さ感じてほしい」

Photo 大会実行委員長を務める発達科学部の長ヶ原誠助教授は、第1回大会からマスターズ甲子園の企画に携わる。球場の確保をはじめ、大会当日も膨大な業務を取りまとめる行動派だ。学生実行委員からも「(大会当日は)先生がどこにいるかわからないくらい動き回ってる」と言われるほど。
 長ヶ原助教授は「自分たちのためだけに何かをやるのはダメだと思う。若い世代や子どもたちのために何を与えられるか考えるのが大人の役目。僕らが自信を持って伝えられるのはマスターズスポーツだ」と話す。
 健康増進をめざす「ヘルススポーツ」や余暇を楽しむ「レジャースポーツ」と違い、目標や夢を達成するため真剣に打ち込む「マスターズスポーツ」は日本が諸外国に遅れをとっている。「実施する人口や機会が少ないことが一因。年齢を重ねて体力が落ちてもスポーツは楽しめる。大会を支える学生には『スポーツって広いんだな』と感じてもらいたい」という。そのためにも「おじさんの自己満足の大会にはしたくない」。

Photo 野球経験者でもある長ヶ原助教授は選手の心理を読んで企画を考える。先に取材した中山ふみ江教授は「長ヶ原先生のすごいところは学んだことを実践に生かせる点。研究事実を発表する研究者は多いが、この大会のように実際のキャンペーンに生かしている人は少ない」と絶賛する。「会場の確保はもちろん、より臨場感を体感してもらえるようブラスバンドやチアリーダー、インタビュアーまで手配している」。甲子園という場では、選手にも学生にも嬉しい配慮だ。
 「大会に向かう気持ちが、選手の日常生活まで繁栄させる」(中山教授)力をもったマスターズ甲子園。今後も地域に根づくスポーツ文化になっていくだろう。(記者=森田篤)

【写真右】記者会見場で会場を見渡す長ヶ原助教授。
【写真左】大会の最後のプログラムとして実施された「親子キャッチボール」。微笑ましい光景に長ヶ原助教授も「涙が出そうになった」。(いずれも11月4日・阪神甲子園球場で 撮影=森田篤)

【関連記事】(2006年8月4日「マスターズ甲子園 学生スタッフの思い」)

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