震災10年シンポ開催 ホテルオークラ神戸で

Photo 阪神大震災10年シンポジウム「伝え、つなぎたい」が12日午後、ホテルオークラ神戸1階の平安の間で行なわれた。主催はシンポジウム「伝え、つなぎたい」実行委員会(神戸大学、神戸市、読売新聞大阪本社)。市民など約500人が集まった中、震災の記憶と風化に関する講演や、震災を語り継ぐためのパネルディスカッションが催された。【1月12日 神戸大NEWS NET=UNN】

 シンポジウムは神戸大学と読売新聞大阪本社が事前に集計した「震災の記憶と風化」に関する意識調査結果をもとに行なわれた。全3部構成。最初に、主催者として神戸大の野上智行学長、板垣保雄読売新聞大阪本社社長、矢田立郎神戸市長の3人が挨拶。第1部では、作家の藤本義一さんが「人間の再発見」と題して基調講演を行なった。第2部は、神戸大の岩崎信彦文学部教授による、5000人市民調査の結果報告。第3部では岩崎教授をコーディネーターに、パネリスト4人が「震災を語り継ぐために」何をすべきかを議論した。パネリストは、加藤寛さん(兵庫県こころのケアセンター研究部長・精神科医)、加藤いつかさん(阪神淡路大震災1.17希望の灯り副理事長)、鐘ヶ江管一さん(前島原市長)、北原糸子さん(災害史研究家)。このシンポジウムについては、27日付の読売新聞朝刊にも掲載される。

Photo 藤本さんは、震災体験から「人は自分たちの力だけで生きているのではなく、(多くの人に)生かされている」と感じたという。普段から人間同士の意識を高め、心のつながりを持つことが大切だと訴えた。「たとえ記録が風化しようとも、個人の震災の記憶は風化することはない。この記憶を文化という広い範囲まで押し上げることが今後の課題だ」

 岩崎教授が分析した市民調査は神戸、大阪、横浜の3都市で実施された。被災者の90%が「震災は絶対に忘れてはならない」と答えた一方で「記憶が風化するのは仕方がないと思う」と答えた被災者が46%に上り、記憶の風化に対する市民の複雑な心境が伺えた。また、「今後、阪神大震災クラスの地震が10年以内に起こると思う」と回答した神戸の被災者が20%だったことについては「市民には、後の東南海地震でほとんど揺れないだろうという意識があるのかも」と岩崎教授。事実、防災訓練に対する積極性は、地域別では神戸が横浜、大阪に比べて最も低かったという。

 加藤いつかさんは「自分たちの住んでいるエリアで、避難所の場所を知ること、家族との連絡方法をあらかじめ決めておくことが重要」と話す。「大がかりなことをしなくてもいい。防災について少し考えるだけでも万一の事態で迅速な対応ができると思う」

 加藤寛さんは、被災者の心のケアについて述べた。「薬など専門家しかわからないこともある。しかし、周りの人が各人でできることを考えるのも立派なケア。あまり肩を張らず、手を差し伸べる方法を考えてみてほしい」

 鐘ヶ江さんは「地形的にも地質的にも日本は災害大国。万一のとき、行政ができることにはどうしても限界がある。家族や財産など、ある程度は自分で守れるよう意識してほしい」と自主救済の必要性を訴えた。

 北原さんは「現代のように情報が発達した社会では、互いに助け合う精神が大切。日本にはその意識が浸透しているので、それを維持できれば」と話した。

   シンポジウムを終えて、岩崎教授は「いろいろな方面の方が(震災に対する)それぞれの受け止め方で意見を出し、震災の深い意味が見出せたと思う。今日議論された内容は、今後に生かされていくと思う」とコメントした。




【写真下】終盤が近づく中、震災の記憶について話すパネリストら。(1月12日午後5時4分頃同上)?

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