神戸は人手不足 監察医の現場を取材

 兵庫県の監察医が神戸市内の葬儀会社員に行政解剖を手伝わせていたことについて、ニュースネットは監察医制度のある5都市の都府県庁に対し、各都市の監察医の現状を取材した。【3月8日 UNN】

葬儀会社の社員が行政解剖を補助

 各都府県の知事が委嘱する監察医は現在、東京23区・横浜・名古屋・大阪・神戸の5都市にだけいる。そのうち、兵庫県の監察医数名が行政解剖の際、神戸市内の葬儀会社「神東社」社員に作業を手伝わせていたことが明らかになった。
 神戸大医学部でも、監察医になっている教官2人が関係したことが分かっている。これについて前田盛(さかん)医学科長は教官らに対し調査・口頭注意する一方、「仕事量に対する人員が大変不足している」と、行政解剖の現場の状況を指摘する。

各都市での監察医制度の現状

 埋火葬を行うためには死亡届が必要で、死因が明らかでなければならない。死因の不明な異常死体は死因を確認するため検案され、検案で死因が確定しなければ、行政解剖が行われる。
 神戸の監察医の人数は11人で、仕事は交代制。神戸市での2000年における行政解剖件数は801件。検案件数1172件に対する解剖実施率は7割近くになる。また、解剖を行うために神戸大医学部の施設を借用している。
 ほかの都市で見ると、横浜の検察医は3人で、同年の検案件数・行政解剖件数は3356件・1102件。ただ、検案・行政解剖に関する費用は遺族負担になる。
 東京・大阪は専用の施設を持ち、それぞれ常勤の職員がいる。監察医の人数は大阪は常勤・非常勤合わせて30人以上、東京は常勤職員が10人程度で、加えて非常勤職員がいる。検案件数・行政解剖件数は東京が1万132件・2261件、大阪が3411件・978 件。
 名古屋は司法解剖が多く、監察医は8人。検案件数・行政解剖件数は6件・6件となっている。

 検案件数に対する行政解剖率を見ると、兵庫県はほかの4都市に比べて高く、県職員も「人材不足は深刻だ」としている。
 最終的に行政解剖の実施を決めるのは監察医で、「(もし監察医らが)適当にやっていたなら今回の問題は起こらなかった。今回の状況は、むしろ監察医らの熱心さを表している」と前田医学科長。だが、「モラル上はやはり不適切。医師をバックアップする体制が必要」と話す。

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