研究や市民活動の足跡振り返る 早川和男名誉教授を偲ぶ会

 去年7月に87歳で亡くなった早川和男・神戸大名誉教授(住居学)を偲ぶ会が、8月2日、神戸市東灘区の御影公会堂で開かれた。教え子や市民活動で共に行動した人たち約150人が、「住居は人権」と主張し続けた早川さんの足跡を語り合った。


(写真:2008年、スクリーンに映された岩手・宮城内陸地震の被災地を訪れた際の写真に参列者が黙とうした 2019年8月2日、御影公会堂ホールで)

 御影公会堂のホールには、学生時代の友人や、同僚、後輩や教え子、それに阪神・淡路大震災の被災地などで活動を共にした市民らが集まり、在りし日の写真に黙祷をささげた。
 早川さんは、日本列島改造論がぶち上げられた昭和40年代後半から、阪神・淡路大震災や東日本大震災が襲う平成の時代にかけて、「住まいは人権」だと主張。意欲的に市民と行動を共にし、著作を発表し続けた。

 マイクの前に立った早大名誉教授の内田勝一さんは、「権力に対するチェックが研究者にとって大切だ、という言葉に一番感じるところがあった。好奇心の人で、本の上や机の上ではなく、理論の深みとともに行動の人だった」と、追悼のメッセージを述べた。
 早川さんの幅広い人脈と奇想天外な着想に驚かされたという、大教大名誉教授の岸本幸臣さんは、「専門家や市民とともに住宅人権を定着させたいと研究運動を進めた。考えるより走る。走った後で考える人だった」と、人柄をしのんだ。

 会場を訪れた、公的援助法実現ネットワーク被災者支援センターの中島絢子さんは、「阪神・淡路大震災後、被災者が放置されている状況を早川さんは『住宅災害だ』と指摘した。先生といっしょに小田実さんらとつながり、3年余り経って被災者生活再建支援法の成立へとつながったのを思い出す。『住まいは基本的人権なんだ』という先生のことばは心にしみた」と振り返った。

 会場運営には神戸大工学研究科の院生や、工学部の学生らも加わった。
 行動を起こしてスタンスを明確にしていく姿勢に共感したという、工学研究科・山崎研究室の越智友祐さん(修士2年)は、「社会に貢献することに意味があると、改めて確認できた。もう一度、早川先生の本を読み直したい」と感慨深い様子だった。

 早川和男さんは、1931年生まれ。京大工学部建築学科を卒業後、日本住宅公団技師、建設省建築研究所などを経て、1978年(昭和53年)に新設されたばかりの神戸大工学部環境計画学科の教授として着任。日本住宅会議事務局長、日本居住福祉学会会長など歴任。2018年7月25日に87歳で亡くなった。
 著書に、『空間価値論 都市開発と地価の構造』(1974年・勁草書房)、『住宅貧乏物語』(1979年・岩波新書)、『居住福祉の論理』(共著、1993年・東京大学出版会)、『権力に迎合する学者たち 「反骨的学問」のススメ』(2007年・三五館)、『「居住福祉資源」の思想 生活空間原論序説』(2017年・東信堂)などがある。

 神戸大学を退官する直前の1995年1月に阪神・淡路大震災が発生し、書架が倒れ資料が散乱した研究室の写真も会場のスクリーンに映し出された。


(写真:遺影の前で、多くの参列者が早川名誉教授の人柄や研究姿勢を語った 2019年8月2日、御影公会堂ホールで)

【訂正】「日本住居福祉学会会長など歴任」とあったのは「日本居住福祉学会会長など歴任」の誤りでした。訂正します。(2019年8月5日 2:37編集部)

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