震災28年慰霊献花式 参列者のことば【前編】

 1月17日に阪神・淡路大震災の慰霊献花式が行われた。神戸大学ニュースネット委員会は、参列者がどのような思いで献花式や1.17を過ごしているのか、話をきいた。前編では、震災で亡くなった神戸大生の遺族と友人や知人、また現役の神戸大生のコメントを紹介する。後編では、大学教職員や一般市民のことばを掲載する。<震災取材班>

(写真:震災で亡くなった神戸大生の遺族)

震災で亡くなった神戸大生の遺族
▽都築和子さん
 当時法学部4年 故・櫻井英二さん<愛媛県立八幡浜高卒/ユースサイクリング部>の姉。
「今年もJR六甲道から(慰霊碑まで)1年を振り返りながら歩いてきました。去年は特段ビッグニュースはなかったが、私にとって(ニュースネットに震災体験の)インタビュー取材を受けたことは大きくて『英くん、お姉ちゃん頑張ったよ』という気持ち。嫌なこともたくさんあったけど、健康に平凡に新年を迎えられて、またここに来られて良かったです」

参考記事「【慰霊碑の向こうに】15 故・櫻井英二さん(当時法学部4年)=姉・都築和子さんの証言=」
<前編>https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/9bf0c4a091b634fa88beb244e92ff7cb
<後半>https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/4a7df18ea52c327df001a6bad941545f

(写真左:弟を偲ぶ都築さん)

▽上野政志さん
 当時発達科学部2年 故・上野志乃さん<兵庫県立龍野高卒/マンドリン部>の父親。
「この日は毎年時間が空いていれば慰霊碑前に来る。銘板の汚れが気になるので立てて貼ってあげたい、という思いがある。また、記念樹を植えたいという提案もしてみたが、実現していなくて寂しいです」

(写真左:慰霊碑についてのコメントをする上野さん)

▽戸梶幸夫さん(75歳)
 当時経営学部4年 故・戸梶道夫さん<大阪府立三国ヶ丘高卒/バドミントン部>の父。
「大阪から毎年来ていて、来年も元気なら来ようと思っている。この頃は顔を合わせる人が減って寂しく思う。息子は震災の前の日に成人式に出席して、17日は部活があるからと神戸に戻ってしまった」

(写真左:息子について語る戸梶さん)

▽戸梶栄子さん(73歳)
 当時経営学部4年 故・戸梶道夫さん<大阪府立三国ヶ丘高卒/バドミントン部>の母。
「早いなと思って。息子には、『元気にしてるよ』と伝えた。あの子はすごく頑張り屋さんで元気な子だった。塾に行かずに、勉強時間を計り、毎日10時間近く勉強していた。ご飯の時間を毎食決めており、とてもせわしなかったのを覚えている。やっぱり17日はここに来たいです」

(写真:献花する戸梶栄子さん)

▽藤原宏美さん、藤原美佐子さん
 当時経営学部4年 故・藤原信宏<三重県立津高校>の父母。
「三重から3時間かけて車できました。今日は天気も体調もいいし来ようかなと思った。コロナ前までは毎年参加していたが、今年は3年ぶり。子どもに罪はない。献花式に来て、あのアパートに入れた私のせいではないかという罪の意識を感じてしまった」

(写真:献花する藤原さん夫妻)

▽坂本秀夫さん(77歳)
 当時工学部3年の坂本竜一さん<兵庫県立八鹿高卒>の父親。
「竜一が生きていれば今年で49か50。僕が竜一を亡くしたのと同じくらいの歳になったなぁ。彼のところに行くのも近くなったと感じます」

(写真:献花する坂本さん)

▽森尚江さん(86歳)
 当時法学部4年 故・森渉さん<大阪府立泉陽高/軽音楽部>の母親。
「震災にあったときは泉北ニュータウンに越してきたばかりでした。息子、渉の追悼のために毎年必ず献花式に行く」

▽阪口真咲さん(49歳)
 当時自然科学研究科博士前期課程1年生 故・今英人さん<石川県立泉丘高卒/軟式野球湧源クラブ>の妹。
「滋賀県から来ました。毎年来ていて、また来たよという気持ちです。震災28年目は、結構経ったなと感じます」

▽中村房江さん
 当時経営学部3年 故・中村公治さん<名古屋市立向陽高卒/映画研究部Rick’s>の母親。
「名古屋から来ました。この2年間は来なかった。亡くなった息子に対する自分の気持ちは変わらないが、他のきょうだいは地震に対してあまり反応がない。仕方のないことなのかもしれないが自分が経験して初めて分かるようになると思う」

(写真:献花する中村さん)

▽鈴木綾子さん
当時工学部3年 故・鈴木伸弘さん<静岡県立浜松北高卒/軟式野球部>の母親。
「浜松から来ました。この2年間は来なかった。年をとってくると、子供がいないのが寂しいです。もし子供がいたら心強かっただろうと思って、とにかく寂しい」

(写真:献花する鈴木さん)

震災で亡くなった神戸大生の友人、知人

▽国司和丸さん(故・高見秀樹さん<当時経済学部4年>の一期後輩の第36代応援団長)
 当時経営学部3年
「毎年変わらない。現況報告しに来ている。ともだ公園には最初はたくさんの人が来ていたが、だんだん人が少なくなって、ニュースでも取り上げられなくなっている。みんなの記憶が薄れていっていると感じます」

(写真:献花する国司さん)

▽末吉種子さん(100歳 森渉さんの下宿の大家さん)
「震災で亡くなった森渉さんの母親・尚江さんとは毎年ここで顔を合わせる。森渉くんは新聞社への内定も決まっていて優秀な子だった。元気やったらどんなに活躍しとっただろうと思います」

(写真中央:森渉さんについて語る末吉さん)

▽越山健治さん(50歳 当時工学部4年)
 故・戸梶道夫さんのバドミントン部の先輩。
「毎年、献花式より少し早い時間に来ていますね。遺族の方に会えたりするかなあと思ってきたが、あんまりいないみたいです」

▽安永倫子さん
「震災当時、神戸大2年生でした。阪急六甲駅の近くに住んでいて、自分は無事だったが、先輩や後輩が亡くなった」

(写真中央:献花する安永さん。)

現役学生のコメント

▽高橋悠太さん(慶応大4年)、國清彩さん(関西大4年)
高橋さんは、「中高のクラブ活動で、一人息子を亡くされた加藤りつこさんと10年来の付き合い。息子さんは志半ばで亡くなった。お母さんはどれほど辛かったことか。僕たちが思いを受け継いでいますよという感謝の意を示すためにここへ来ました」と話す。
國清さんは、「毎年来ていて今年で5回目。いつも同行していた加藤さんが体調を崩して来られなかったので、代わりに来ました。今年は代行ということで、思いを届ける。花を届けることで震災を忘れないという意を示したいです」と話した。

▽経済学部4年の堀田ちひろさん
「4年間震災救援隊に所属し、卒論でも震災関連のテーマを扱っている。来るものかなと思ってきた。使命感です」

▽経済学部4年の学生
「最近、阪神・淡路大震災で神戸大生が亡くなっていると知り、今、4年生なので最後に手を合わせに来ました」

▽法学部2年生の古谷美南海さんと武田百花さん
「ニュースネットのTwitterで追悼記事を読んだり、社会科学図書館で震災関連の展示も見たり、通学途中に阪急宝塚線で震災追悼の「生きる」の文字を目にしたりした。2人で誘いあってきた。祖母が淡路島に住んでいて被災したり、知り合いが亡くなったりした」

▽人間発達環境学研究科修士1年の女子学生
「神戸大に5年通っていたが、来たことがないので、神戸大生として今日ここに来ないといけないと思いました」

▽農学部1年の女子学生
「高校まで長野に住んでいて震災に馴染みがなかったが、学生という自分と同じ立場で亡くなった人がいるということを忘れてはいけないと思って来ました」

▽人間発達環境学研究科1年の登賢太郎さん
「年代、同じ立場の人が被災したことを知りました。高田先生など当時の被災したいろんな話を聞いて、次の災害が起きた時に備える必要があると思った」

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