２０２３年４月、国際人間科学部の同窓会「紫陽会」で多額の使途不明金が発覚。今年２月には会報で謝罪し「調査中」と報じ、さらに4月中に公式サイトにも会報を掲載したが、全容は明らかになっていない。新たに就任した蔭山慎吾会長は、取材に応じ「きちっと解明し、今年度末の調査完了を目指したい」と話す。＜奥田百合子、佐藤ちひろ、蔦旺太朗＞

　（写真：ニュースネットの取材に応じる蔭山会長。2024年4月21日12時半撮影）

　鶴甲第２キャンパスの事務室前の廊下には、紫陽会の会報が山積みにされている。会報３ページに「会長就任のごあいさつ」があり、「約２０年という長きにわたって多額の使途不明金が生じていることが判明しました」、「会費や支援金など、紫陽会の貴重な財産の管理・運用が不適切であったために、皆様をはじめ大学当局や各方面に多大なご心配とご迷惑をおかけすることに対して、誠に申し訳なく、紫陽会を代表して心よりお詫びを申し上げます」とある。

会報『紫陽会』（HP掲載）

　蔭山慎吾会長（教育学部１９７７年卒）に取材を申し込むと、「揉み消そうなどとする意図は全くない。会計監査にきちんと取り組めていなかった」とこれまでの経緯を説明した。

（写真：山積みになっている紫陽会の会報。鶴甲第2キャンパス教務学生係前。4月10日12時53分撮影）

会計担当の交代で発覚

　２０２３年４月、国際人間科学部（旧教育学部）の同窓会「紫陽会」で、会計担当者の交代の際に多額の使途不明金が発覚した。

　前任の会計担当者は約２０年間、ひとりで会計担当を務めていた。それまでは、もうひとりと２人で会計を行っていたが、その人物の死去に伴い、前会計担当者が１人で会計を務めることになった。

　一般的に同窓会などの会計では、収入・支出がある度に「収入記録」や「支出記録」を作成し、責任者や代表者の押印を得てから口座から引き出す。それぞれに領収書を添付して保存するのが常識だ。

　「２０年ほど前から使途不明金が発生」と紫陽会が会報で触れているが、他学部の同窓会関係者や大学関係者からは、「なぜこれだけ長い期間にわたって組織として気が付かなかったのか」、「毎年度、通帳の残高を確認して領収書などとつき合わせていたら、その時点で気がつくはず」という声が上がっている。前任者が引き継ぐ前から会計に齟齬があり修正ができなかったのか。なぜ前任者や幹部がそれらに気が付かなかったのか。解明し、報告されることが期待される。

　今回、会報には「必要な会計諸帳簿が散逸していることが明らかになった」とある。つまり、必要な書類が存在しないにも関わらず、通帳から現金が引き出されていたことで、使途不明金があることが発覚したとみられる。

使途不明金　金額は調査中、民事訴訟が進行中

　紫陽会は、２０２３年４月に内部調査を始めた。使途不明金の金額については、現在も調査中だという。

　特別会計（基本財産）の前年度繰越金をみると、紫陽会の会報に掲載された２０２２年度予算では、６９００万円余と記載があった。一方、２０２３年度の予算では、前年度繰越金は２２００万余と記載があった。差額は約４６００万円になる。この差額分は何に使われたのか、などが使途不明金の解明のポイントと見られる。

　蔭山会長によると、「２０２２年度の会計報告の金額自体、不確かな数字かもしれない」が、「２０２３年度の前年度繰越金は通帳残高などをすべて確認して出した金額であるため確かな数字だ」という。関係者は「４６００万円よりは少なくなるのではないかと考えている」というが、他の同窓会関係者は『それにしても（つじつまが合わない）額が大きい』と指摘する。

同会によると、まず、前会計担当者を相手取った民事訴訟を進めているという。

大学本部、校友会には２０２３年５月に報告

　同会は２０２３年５月に神戸大学本部、校友会、国際人間科学部長に対して今回の件について説明を行った。

　蔭山会長によると、大学本部からは、大学と同窓会は組織としては別であるため、「同窓会内部の問題として解決に努めて欲しい」という返答があったという。

　各同窓会への直接の説明は行わなかったが、蔭山会長は「校友会を通して、各同窓会に今回の件の通達が行っているのではないか」と話した。

前会長が退任　８月の評議員会で報告

　紫陽会は、２０２３年までコロナ禍の影響で総会を開催できていなかったが、総会の代わりとなる評議員会を２０２３年８月５日に開催。この場で、概要が報告されたとみられる。２０２３年９月には、会長が交代した。

　その後、同会は２０２４年２月１日付の会報で「２０２２年度決算及び会計監査等の結果報告の延期について」と題し、今回の使途不明金について初めて公に発表。会報は紫陽会全会員の約１万６０００人に郵送された。

　在学生に対しては、鶴甲第２キャンパスの２階事務室前に会報が置かれている。

後編「国人の同窓会「紫陽会」　約20年間にわたり多額の使途不明金②」に続きます。

了