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近藤民代教授トークセッション 「どんな学問も災害時に役立つ」
12月11日、30年前の阪神・淡路大震災のときに工学部1年生だった、神戸大都市安全研究センター教授の近藤民代さんの体験を聞くトークセッションが行われました。取材者だった元NHKアナウンサーの住田功一さんと語り合う中で、被災した街と向き合うことが大切で、どんな学問も災害時には役立つことを忘れないでほしいと語りかけました。<ニュースネット取材班>
(写真:トークセッションに登壇した近藤民代教授=右=と、聞き手の住田功一さん。工学部C2棟201教室で。2024年12月11日18時すぎ撮影)
学生、教職員、市民らが熱心に耳を傾ける
このトークセッション「工学部一年生が見た阪神・淡路大震災」は、震災30年を前にもう一度何が神戸で起きたのかを知り、将来の災害に備えようというもので、ニュースネット委員会の主催、神戸大学校友会、KTC神戸大学工学振興会の協力で行われました。
会場の工学部C2棟201教室では、学生、教職員、市民、スタッフら20数人が、震災直後の大学周辺の様子に耳を傾けました。
(写真:二人の語り合いを静聴する来場者たち)
1995年1月17日の震災発生当時、神戸大工学部建設学科1年生だった近藤民代さんは、インフルエンザにかかって滋賀県の実家で寝込んでいたと言います。母親から「神戸が大変なことになっている」と聞き、テレビなどのニュースで神戸の状況を知りました。
発生から10日ほど後に、動いている電車とバスを乗り継いで大学に向かった近藤さんは、車窓からは倒壊した住宅の断面や中の家具などが見えて、まるで玩具のドールハウスを開いたような状況だったと回想。「こんなに建築物が壊れるものなんだと思った」と、学生当時の率直な気持ちを話しました。
被災直後の神戸大には安否確認の掲示板
聞き手の住田功一さん(元NHKアナウンサー、1983年経営卒)は、震災当日と十日後に神戸大の学内や周辺を取材したときの写真をスライドで見せながら、工学部キャンパスのはるか南側の六甲道周辺に黒い煙が上がる様子や、鶴甲第1キャンパスの武道館が避難所になって大勢の市民がいる様子を説明。
工学部入り口に掲示された学生名簿の掲示板の写真については、来場していた元工学部教員が、「無事だった学生には◯印をつけてもらうようにして安否を確認した」と証言。会場の参加者は、大きくうなずいていました。
経済学部の校舎に張り出された掲示の写真には、「一月十九日から二十七日まで全講義を休講とする。論文の提出は三十一日まで」、「期末試験については、一月三十一日午後二時から説明会を行います。登校困難な人には後日郵送でお知らせします」と書かれていて、近藤さんは、「私は工学部の説明会に出たときに、(発災後に)初めて神戸に行ったのだと思う」と、当時を思い出していました。
被災建物調査には参加しなかった近藤さん
近藤さんは、震災直後、建築系の大学生たちが参加した被災家屋の建物調査には参加しませんでした。
「倒壊した家屋の合間を縫って行くことは怖かった」、「両親は『ここに(東灘区の下宿ではなく滋賀県に)いてくれてよかった』といっていた。それを振り切って行くことはできなかった」と語る一方で、「今となっては、どうしていかなかったのか後悔もあります」と打ち明けました。
震災犠牲者への調査では“重い経験”
復興を話し合うため、市民と行政の間に立つコンサルタントに関心を持っていたという近藤さん。大学院時代は、教授だった室崎益輝さん(現・神戸大名誉教授)の呼びかけで始まった「震災犠牲者聞き語り調査」に参加しました。
大学院生が2人1組で遺族を訪ね、「間取りの図面を書き起こし、どのように亡くなっていたのか、遺族がどのように向き合ったのかを直接聞くかなりヘビーな活動だった」といいます。
聞き取りの相手には亡くなった神戸大生の親もいて、木造のアパートを選んだことを悔やんでいたことが忘れられないと語る近藤さん。
振り返るといたたまれない気持ちで、親となった今ではとてもこのような活動には参加できないだろうとも語り、「きっと学生だから(遺族が)話してくれたということもある」と語りました。
「後輩たちには後悔してほしくない」
近藤さんは、2005年のアメリカのハリケーン・カトリーナ災害で現地に入って研究したことや、2011年の東日本大震災では、岩手県大槌町に教え子の学生と出向き、現地の高校生とともに定点観測の活動を行ったことも紹介しました。
震災直後の被災建物調査に参加しなかったことや、妊娠中などですぐにフィールドワークに動き出せなかったことなど、研究者になった今から思えばさまざまな後悔があったという近藤さん。後輩の学生たちに、街から目を背けずに「眼で見て確かめることが必要」と話しました。
(写真:研究への思いを語る近藤さん)
神戸大生は被災地神戸での学びを活かしてほしい
最後に近藤さんは、後輩の神戸大生へのメッセージとして、「被災地である神戸、復興した結果の街で学んでいることを生かしてほしい」と訴えました。
また、若い世代の人たちには、どんな学問でもどのような分野でも、災害時には貢献できるはずで、「自分の分野で考えてみることをしてみてほしい」と語りかけました。
このトークセッションの模様は、2025年1月4日(土)午前4時台のNHK「ラジオ深夜便」で放送される予定です。放送後1週間は、インターネット「らじる★らじる」の聴き逃しサービスで聴くことができます。
了