震災30年のメモリアルコンサート 代表「いまは神様からのpresent」

 声楽アンサンブルのLux in Kobeが、阪神・淡路大震災を追悼する「30年 メモリアルコンサート」を1月13日に神戸市東灘区文化センターで開催し、300人以上が来場した。同団体は震災から30年間、国内外でコンサートを行っている。<奥田百合子>

(写真:コンサートの様子。 2025年1月13日15時34分撮影)

 神戸を拠点に国内外でコンサートを行っている声楽アンサンブル・カメラータ神戸を中心としたLux in Kobeが、阪神・淡路大震災を追悼する「30年 メモリアルコンサート 次世代へ歌い繋ぐ」を1月13日の14時から神戸市東灘区文化センターのうはらホールで開催した。会場には300人以上が足を運んだ。

(写真:コンサートの開演をまつ観客たち。 2025年1月13日13時57分撮影)

 コンサートは、震災を追悼するメッセージと当時の写真を載せたスライドショーからはじまった。震災当時は灘区に住む中学生だったというメンバーの塚本由佳さんが登壇し、「歌いつづけ、悲しみの渦と向き合いつづけた」とこれまでの活動を振り返った。その後、黙とうの時間がとられた。

 コンサートは2部構成で、作曲家のエリック・コロンさんが作曲した「LUX IN KOBE」やアントニオ・ヴィヴァルディの「Gloria」などが披露された。
 エリック・コロンさんは、曲の間に会場内の観客席から前方へ進み、「作曲するのは楽しいが、歌っている人がいなければ無駄。そしてお客さんがいなければ、みんな寂しくなる。だからみんなありがとう」と語り、会場から大きな拍手が起こった。

(写真:スピーチをするエリック・コロンさん。 2025年1月13日14時31分撮影)

 来場者の甲斐憲正さん(80)は、「姪がカメラータの合唱指導員をやっているから、聴きにきました」と話す。震災当時、甲斐さんは大阪府吹田市の江坂に住んでいたという。「(震災のとき)爆弾が落ちたと思った。テレビが家内の腹の上に落ちてきたから、私が急いでかぶさったんです」と当時を振り返る。
 出演者の夫で、神戸大卒業生の瀬岡さん(1990年・工学部卒)は、震災当時は兵庫県朝来市に住んでいた。「(黙とうの時間は)知り合いが被災したことを思ってしのびました」と話した。

 (写真:第1部では、ステージ上にキャンドルが並べられた。 2025年1月13日13時55分撮影)

 カメラータ神戸は、最初の練習日としていた1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生。結成日だったはずの「あの日」は仲間の安否を確認することになり、その後被災者が身を寄せる集会や仮設住宅で歌うようになった。
 団体の代表である鼓呂雲(コロン)由子さんを中心として、20年以上活動にかかわっているメンバーもいる。

 声楽アンサンブルのメンバーたちは、コンサートを終えてから、震災当時のことを振り返った。

 当時尼崎の開業医だった明石恭治さんは、妻の敬子さんとともにクリニックを開けようとしたが、カルテの上にガラスが落ちて取り出せない状態だったという。敬子さんは「午前にひとりお客さんが来られたけど、いったん帰ってもらい、午後から(クリニックを)開けました」と話した。

 代表の鼓呂雲さんは、当時住んでいた東灘区のペントハウスが全壊したといい、「グランドピアノがポップコーンのように跳ねていた」と振り返る。震災から活動を続けるカメラータ神戸とコンサートについては、「『人のつながり』でこのグループがある。みんな同じ痛みをもっています。次の世代につないでいくために、今日のコンサートは特別だった。一昨年から準備をはじめました」と話した。しかし、鼓呂雲さんは去年がんになり、数カ月間の入退院を繰り返したという。

 鼓呂雲さんは「毎日毎日を一生懸命に生きているから、手術の時も怖くなかった。過去はhistoryだから悔やんでも仕方がない。未来はmysteryだし、現在(いま)は神様からのpresent。当たり前なことを当たり前と思わず、震災の記憶を次の世代につないでいきたい」と話した。

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