阪神・淡路大震災から３０年の１月１７日、神戸大六甲台第１キャンパスでは慰霊献花式が行われた。神戸大ニュースネット委員会は参列者がどのような思いで献花式に訪れたのか、話を聞いた。前編では、震災で亡くなった神戸大生の遺族と友人や知人のコメントを紹介する。後編では、大学教職員や一般市民のコメントを掲載する。＜ニュースネット取材班＞

（写真：慰霊碑前で集合する遺族や関係者ら）

震災で亡くなった神戸大生の遺族・友人

▽大谷優一さん
　当時経済学部３年　故・高見秀樹さん＜鳥取県立米子東高卒／応援団＞の２年後輩。
「ちゃんと生きにゃいかんという気持ち。高見さんが生きていたら何を言われるかなと考える。怒られそうです（笑）」

▽加藤りつ子さん
　当時法学部２年　故・加藤貴光さん＜広島県立安古市高卒／ＩＳＡ国際学生協会所属＞の母親。
「３０年という節目であるから、大勢の人が参列してくれて嬉しいし、ありがたい。でもわたしたち遺族にとっては、常にあの日は今であって、決して過去にはなっていない」

▽山口健一郎さん
　当時法学部２年　故・加藤貴光さん＜広島県立安古市高卒／ＩＳＡ国際学生協会所属＞の友人。
「３０年も経ったのかという気持ち。自分の心の中に亡くなった人たちがいて、命を大切にしなければいけないというのが自分の原点になっている」

▽森祐理さん
　当時法学部４年　故・森渉さん＜大阪府立泉陽高卒／軽音楽部＞の姉。
　「百年記念館で行われている企画展も見て泣いた。２０年は人間で言うと成人。まだこころもとない気もするけれど、それが３０年ともなるとやはり大きな一区切りという感じがある」

▽末吉信二さん
　当時法学部４年　故・森渉さん＜大阪府立泉陽高卒／軽音楽部＞の下宿の大家さんの息子。
「早いもんやと思うが、遺族の方はひとつ乗り越えられたのかなとも思う。遺族の方の息子、娘さんを引き合わせる力が働いているのかなと思う」

▽森尚江さん（８８歳）
　当時法学部４年　故・森渉さん＜大阪府立泉陽高卒／軽音楽部＞の母。
「５時４６分にラジオでの黙とうを聴き、京都からこちらに向かった。毎年そうしている」

▽国司和丸さん
　当時経済学部４年　故・高見秀樹さん＜鳥取県立米子東高卒／応援団＞の１期後輩、第３６代応援団長。
「節目だから、というのは自分の中ではない。もう３０年経つんだなというのはすごいある。高見さんと一緒にやっていた仲間たちの子供で、成人している子が何人かいる。そういうのを考えると３０年経ったなというのは感じる」

▽坂本秀夫さん（７９歳）
　当時工学部３年の坂本竜一さん＜兵庫県立八鹿高卒＞の父親。
「彼（竜一さん）のところへ行くのが近くなった。今年は８０になる年で、もうじきしたらお前の所へ行くからなという気持ち。雪の予報があったが、足元が良くて良かった」

▽竸朗子さん
　当時自然科学研究科博士前期課程１年　故・竸基弘さん＜愛知県名古屋市立向陽高卒／ユースサイクリング部＞の妹。
「子育てで長らく献花式に来ていなかったが、今回９年ぶりに参列した。兄に、息子と母と来たよと伝えた」

▽竸樹弘さん
　竸朗子さんの息子＜名城大２年＞。
「小学５年生の時に来た。伯父（基弘さん）に会ったことはないが、写真を見たことがあり、生きていたらどうだっただろうと思う。今回参加して、遺族の思いを感じることができた」

▽鈴木綾子さん
　当時工学部３年　故・鈴木伸弘さん＜静岡県立浜松北高卒／軟式野球部＞の母。
「もう３０年経つと思えない。（伸弘が使っていた）机もそのままにしている。未だにこっち（神戸）にいるような気持ちがする」

▽鈴木弘さん
　当時工学部３年　故・鈴木伸弘さん＜静岡県立浜松北高卒／軟式野球部＞の父。
「慰霊碑にはたびたび来ているが、献花式に参列するのは２０年ぶり。（下宿先とともに焼けて）遺体を見ていないので、まだ戻ってくるかなという思いがある」

▽林洋子さん
　当時法学部２年　故・加藤貴光さん＜広島県立安古市高卒／ＩＳＡ国際学生協会所属＞の友人。学校教員。
「沖縄から来て昨日の夜に着いた。今回初めて献花式に来たが、来るのに３０年かかった。これまで来たいと思わなかった。３０年の節目ということが大きく、気持ちが整理できるのではないかと思った」

▽阪口真咲さん
　当時自然科学研究科博士前期課程・１年　故・今　英人さん〈石川県立泉丘高卒/軟式庭球同好会、スキー同好会〉の妹。

「今年３０年ということで、結構時間経ったなと思うが、そんなに自分は変わっていない。毎年学生が変わっているのに、このようなイベントや取材を続けてくれるのはありがたい」

▽上野政志さん
　当時発達科学部２年　故・上野志乃さん＜兵庫県立龍野高卒／マンドリン部＞の父。
「今回は多くの方が来られて、にぎやかな方が（志乃さんが）喜ぶのではないかと思った。みんなに知ってもらえてありがたいという思い」

▽戸梶幸夫さん（７７歳）
　当時経営学部２年　故・戸梶道夫さん＜大阪府立三国ヶ丘高卒／バドミントン部＞の父。
「（３０年は）早いなという思い。元気なうちはまた来続けたい」

▽戸梶栄子さん（７５歳）
　当時経営学部２年　故・戸梶道夫さん＜大阪府立三国ヶ丘高卒／バドミントン部＞の母。
「道夫は何事にも熱心で、大学では庭で練習するほどバドミントンに打ち込んでいた。道夫のように変わらず元気でいたい」

▽越山健治さん
　当時経営学部２年　故・戸梶道夫さん＜大阪府立三国丘高卒／バドミントン部＞の先輩。
「クラブの後輩を追悼するため、京都から来た。震災の記憶、多くの人が命を落としたということを語り継いでいってほしい」

▽ティン・エイ・エイ・コさん
　当時国際文化学部研究生　故・キン・テイ・スエさん〈ミャンマー〉、同学部研究生　故・ウエイ・モウ・ルインさん〈ミャンマー〉の友人。
「３０年前に亡くした友達に会いに、３０年ぶりに来た。（震災対策に関しては）昔と今は色々と違うと思う。震災に対する意識が強く、ある意味準備ができている気がする。日本に戻ってきて、今は繋がりと関係が大事だということが改めてわかった」

震災30年慰霊献花式　参列者のことば【後編】へ続く

（奥田百合子／熊谷孝太／尾畑陽貴／本多真幸／長瀬福実／蔦旺太朗／笠本菜々美／佐藤ちひろ）