教え子や財界関係者が別れ惜しむ 加護野名誉教授お別れの会

 昨年12月28日に77歳で亡くなった加護野忠男・名誉教授のお別れの会が、6月29日、神戸市内のホテルで行われた。日本を代表する経営学者だっただけに、教え子、大学関係者だけでなく、財界関係者ら500人が来場し別れを惜しんだ。<取材班>

(写真:会場には柔和な顔で微笑む加護野さんの遺影が 2025年6月29日午後 神戸市中央区港島の神戸ポートピアホテルで)

 梅雨が明け青空の広がった6月29日、神戸市中央区ポートアイランドのポートピアホテル「大輪田の間」のステージには、柔和な顔で微笑む加護野さんの遺影が置かれ、研究者や教え子、財界関係者ら、500人が参列して「加護野忠男先生お別れの会」が行われた。

(写真:弔辞を述べる國部克彦・神戸大経営学研究科長 2025年6月29日午後)

 神戸大経営学研究科長・教授の國部克彦さんは、「六甲台部局は常に関西のトップでなければならない」という加護野さんの言葉を引き、「MBAを全国に先駆けて設置できたのは、先生のおかげです」「(六甲台部局を)取り巻く環境が厳しさを増すなか、進化し続けることが、先生の遺してくださった教えです。長い間ありがとうございました」と感謝を述べた。

(写真:弔辞を述べる伊丹敬之・一橋大名誉教授 2025年6月29日午後)

 マイクの前に立つなり、「さきに逝っちゃあダメだよ」と一橋大名誉教授の伊丹敬之さんは盟友の死を惜しんだ。1981年に「日本企業の多角化戦略–経営資源アプローチ」を加護野さんらと出版した経緯を明かし、情報的経営資源の大切さを共著者らで語り合ったという。2人の共著、「ゼミナール経営学入門」の新装版5刷が3日前に届いたばかりで、累計34万部超となったことも報告。「次の改訂はあなたといっしょにやろう」と遺影に語りかけた。

(写真:弔辞を述べる石井淳蔵・神戸大名誉教授 2025年6月29日午後)

 神戸大名誉教授の石井淳蔵さんは、教養課程の語学クラスで出会ったのが最初で、かけがえのない大学の同期だったと紹介。研究の価値を理解する一方、「それがいったい、なんぼのもん?」という加護野さんの目線を感じたといい、「研究者として、教育者として、新たな目標をいつも与えてもらった」と讃えた。

(写真:弔辞を述べる大坪清・関西生産性本部会長 2025年6月29日午後)

 関西生産性本部会長で、レンゴー会長の大坪清さんは、「こんな形でお会いするとは、残念でなりません」、「高校、大学の後輩の弔辞を読むのは痛恨の極みだ」と述べた。「短期の利益よりも長期の成長を重視する日本型経営に自信を持てと、日本の経営者にエールを送り続けてこられた。加護野先生の“遺言”を受け継ぎ、日本経済の発展と国民の幸せのためにまい進していきます」と決意を述べた。

 会場では、2011年1月に行われた加護野さんの最終講義のビデオが上映され、ありし日の面影を偲んだ。最後に来場者は遺影の前に献花をして、別れを惜しんだ。

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 「お別れの会」のメッセージ書き込みサイト(https://b.kobe-u.ac.jp/kagono_message/)には、ゼミの教え子や薫陶を受けた全国の経営者、研究者らからの書き込みが100件近く寄せられている。

 「ゼミでのご指導以外にも、私が所属していた神戸大学児童文化研究会の顧問をしていただいていたのでいろいろお願いに上がることも多かったです。長い間本当にお疲れ様でした。ありがとうございました!」(1990年・営卒、ゼミ生)

 「ファミリービジネス学会にて頂戴したご指導は、まるで春風のように爽やかでありながら、本質を鋭く突くものでした。そのお言葉の一つひとつが、今も私の研究を支えております」(大学教員)

 「先生の文章や講演は誰にもわかりやすく、心に真っすぐ入るし、メッセージはいつまでも残ります。私たちはついつい格好つけて最新の概念や流行の言葉に飛びつきますが、そうじゃないんですよね。今では私も加護野先生を真似て学部生やMBA生に『大和言葉で言え』をやっています。伝えるとはそういうこと。一生モノの教えをいただきました。」(大学教員)

 「『従業員と組織の間の心理的契約』に関わる調査の内容をMBAの学生さんたちに説明するにあたって先生は、『神戸洋菓子産業における取引ネットワーク』の話からはいり、『取引業者間で共有されている不文律』の話へと展開し、最終的に、『日本企業を支えていたのは、(雇用者と従業員を含めた)人と人との間の書かれざる契約である』というように話を着地させておられました。現実と理論とを瞬時に結びつけ、かつそれを、聞く人の心に響く言葉やエピソードへと、笑いを交えつつ変換する、一流の研究者の仕事を見た瞬間でした。」(研究者)

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 加護野さんは1947年、大阪市出身。大阪府立大手前高校から神戸大経営学部、同大院経営学研究科を経て1973年同大経営学部助手となり、1979年助教授、1988年に教授。
 2011年に神戸大名誉教授となったほか、甲南大特別客員教授や大阪経済大客員教授を務めた。
 2024年12月28日午前、脳出血のため死去。77歳だった。

 日本を代表する経営学者で。日本の会社制度や経営組織について幅広く研究した。専門は経営戦略、経営組織。企業の監査役や関西生産性本部の理事を歴任。同族企業の経営研究を目的としたファミリービジネス学会の設立などにもかかわった。
 1989年に国立大初のMBAを神戸大で立ち上げた。2008年度から修士論文(専門職学位論文)のなかから優秀な作品を選考し、加護野忠男論文賞として表彰している。

 経営学部長退任直後の2000年、アメリカ出張中に脳出血で倒れ、体に麻痺が残ってからも車いすで講演するなど、精力的に活動し発言を続けていた。

【関連記事】「元経営学研究科長の加護野忠男・名誉教授 12月28日に死去、77歳」(2025年1月6日)= https://x.gd/TU4uq

【関連記事】「加護野名誉教授お別れ会 6月29日(日)ポートピアホテルで」(2020年5月11日)=https://x.gd/0G3O6

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