テクノロジーを通した学生同士の交流、社会との交流を目的に設立された学生団体「GDGoC Kobe University(ジーディージー・オンキャンパス コウベ ユニバーシティー)」が、キックオフイベント「大学の勉強は何に役立つのか?」を12月19日に開催した。約40人の学生で、教室はほぼ満席になった。<編集部>

(写真:部屋が参加者で埋まった神戸大GDGoCのキックオフイベント 2025年12月19日午後 六甲台第2キャンパス自然科学総合研究棟3号館で)
11月に設立された学生団体「GDGoC Kobe University(神戸大GDGoC)」が、キックオフイベント「大学の勉強は何に役立つのか?」を12月19日、自然科学総合研究棟3号館の106室で開催した。この団体は、池島蓮(工学部情報知能工学科4年)さん、和田連弥さん(同4年)の2人を代表に、このほど結成された。
この日は、工学部やシステム情報学部の学生を中心に約40人が参加。1年生が半数を占め、次いで4年生が多かった。
オープニングでは、池島さんが、「大学の講義の見方を少し変えて、リターンを増やし、モチベーションを高めよう」とあいさつ。
最初に、「線形代数の授業をどう受けるか」をテーマに参加者と考えを進めた。過去問を集めて試験を受ける、評価の甘い教員を選ぶなど、目先の「ROI(費用対効果)」だけでなく、線形代数への取り組みを深めて将来のリターンを増やすことも大切ではないかと提示。大学生活の中で、「意味のある努力に集中する」ことでROIを上げることの大切さを説いた。
続いて、石原直樹さんが登壇。石原さんは、神戸大文学部哲学科に入学し2年通ったのち、東大経済学部に進み卒業。
NTTコムウェア、サン・マイクロシステムズ勤務を経て、2006年に Google 日本法人に入社。4年間は東京オフィス、10年間をカリフォルニアの本社で勤務し、主にシニア・プログラム・マネージャーとして活躍。現在は、エネルギー系スタートアップのPower X勤務。Google の元技術者たちと共に、神戸でトップレベルのソフトウェアエンジニアを育成するボランティア活動 Alpha+ Project で活動するほか、神戸大の非常勤講師もつとめている。
石原さんは、表層的な社会の動きに踊らされず、未来を見据えて社会の役に立てるなど、ハイテク業界で働く楽しさを説いた。語学、経営学など、大学で学んだ知識はすべて役にたったといい、さまざまなジャンルの授業をとることをすすめた。
自分は文系出身だが、GAFAMと呼ばれる巨大IT企業には文系出身の技術職もいるという。そして、学生たちには、「いずれかの技術コミュニティに所属して活動することをお勧めする」と語りかけた。

(写真:幅広い学びが役にたったと話す石原直樹さん)
続いて、株式会社エクサのクリエイティブサービスデザイナー、安藤幸央さんが、20周年を迎えたGoogle Mapをテーマにリモートで学生たちに語った。
Google Mapでは、最短経路を探し出したり、GPSの誤差を修正するためにいろいろな技術がつかわれている。技術を駆使するためには、多様な分野のプロトコル(共通言語)を持つことが重要で、いろいろな授業でその手がかりを得ることが大切だと語った。
「学びが役立つ職業につけるか?役立たせることができるかどうかはあなた次第だ」「学びは、タイパ重視せず、一見無駄と思える時間も重要だ」と話し、巡り巡って、何十年か後に投資を回収できることもあると来場者に話した。

(写真:オンラインでレクチャーする安藤幸央さん)
神戸大GDGoCのオーガナイザー(メンバー)らも、リレーで身近な技術を解説。
Google の検索エンジンをテーマにしたセッションでは、「誤った文字列で検索窓に入力した場合に、入力したかった単語をどのように推定していくか」や、「言葉の意味を『文脈』から計算する」というテーマでの解説が行われた。
吉川翔さん(同4年)と﨑山敬太さん(同4年)が、単語ベクトル、レーベンシュタイン距離、ANNアルゴリズムなどさまざまな手法や考え方で解決することを紹介し、参加者の知的好奇心を刺激した。
ロボット工学を学んでいるという森楽人さん(同4年)は、人型ロボットに「コーラをとってきて」と指示した時に、「コーラ」という単語からどの部屋にあるかを類推し、マップを元にどのように移動するか、を動画をみせながらわかりやすく説明。
人間の役に立つロボットを実現するために、線形代数や確率統計、アルゴリズムなどの学問を使用することを説いた。
また、劉彩達さん(同4年)は、ロボットやAIのもとになる「最適化」について、学部1、2年で習う線形代数が基本だと説明。
オーガナイザーらは、いずれの事例でも基礎的な学びが基本になると訴えた。

(写真:GDGoCのオーガナイザーも後輩たちに語りかけた)
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「GDGoC(ジーディージー・オーシー)」とは、Googleの技術に関心のある学生を対象にしたコミュニティで、近年、全国の大学に団体設立の動きが広がっている東大、阪大などにはすでに拠点ができていて、京大でもこの秋、神戸大とほぼ同時に設立されたという。
「神戸大学にもGDGoCができたことを知ってほしい」と、共同代表の和田さんと池島さんは、今回のイベントの目的について語る。「1年生で習う授業も、最新テクノロジーにつながっている。そこを入り口に、コンピューターサイエンスに興味を持ってほしい」という。
和田さん自身、線形代数や微分積分の授業に興味を持てず、テスト前の一夜漬けで単位を取ろうとしていたという。「4年生になって研究が始まって、そうした基礎がどう使われているかを知って、楽しさに気づいた」といい、授業にもっと前向きに取り組んでおけば良かったと後悔。後輩たちには、そうした轍を踏まないようにと、この活動を始めたという。
2人は、「私たちのイベントで刺激をうけて、コンピューターサイエンスの世界に入るきっかけをつくる学生を増やしたい。社会とのつながりも持って視野を広げてほしい」と呼びかけている。
神戸大GDGoCの立ち上げメンバーは7人。全員4年生なので、1年生2年生にぜひスタッフに入ってもらいたいという。
オーガナイザー入会の連絡は、下記まで。
▽公式サイト=https://gdg.community.dev/gdg-on-campus-kobe-university-kobe-japan/
▽公式X=https://x.com/gdgoc_kobe_univ
▽公式ディスコード=https://discord.gg/scfbDuwX

(写真:後輩たちに入会を呼びかける神戸大GDGoCの設立メンバー)
了
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