迫真の愛憎劇演じる 自由劇場6月公演

 演劇部自由劇場の公演「熱海殺人事件~売春捜査官」(作・つかこうへい、演出・若原別)が6月20日から22日まで、六甲台講堂で上演された。3日間で302人が訪れ、観客席まで使った迫真の演技に見入った。【6月22日 神戸大学NEWS NET=UNN】

Photo 舞台は東京警視庁。熱海で起こった殺人事件を、名刑事の呼び声高い女性部長刑事・木村伝兵衛(かなりーな)が捜査にあたる。
 幼なじみの山口アイ子を殺した容疑で逮捕された大山金太郎(偽善ラヂオ)に対し、挑発的な口調で取調べを進める伝兵衛。執拗な調査に、当初は単純な情動殺人かと思われた事件も複雑さを増していく。かつての伝兵衛を愛しながら、その一途さの前に姿を消した刑事・熊田留吉(時勢粧)や、伝兵衛の部下でゲイの戸田禎幸刑事(丸木唐三郎)、大山らの故郷の先輩で、事件の直前に自殺した朝鮮人の李大全らも加わり、事件はそれぞれの愛憎劇を描き出す。
 「人間臭い、アツイ芝居がしたかった」と、演出の若原別さん(法・3年)。売春、性差別、人種差別などのテーマを、役者たちのストレートな台詞で表現した。割り切れない人間関係が絡み合うストーリーに、役者がカラオケを歌いながら客席から登場するなど物語以外の仕掛けも取り入れた。
 ラストでは伝兵衛が自分の操を引き替えに、処刑台送りにした大山の故郷を守り、その故郷から見放された李大全の墓を造る。「今、義理と人情は、女がやっております」。伝兵衛の最後の台詞とともに舞台の幕が下りた。
 伝兵衛役について、「強い女の役どころは、普段の自分とギャップがあった。でも、彼女は、強がってるけどやさしい人なんです」と、主演のかなりーなさん(神戸市外大・3年)。若原さんも「人のやさしさみたいなものが伝われば」と振り返った。

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