神戸大海事科学部・大学院研究科は平成15年深江キャンパス(旧・神戸商船大キャンパス)に設置され、神戸大で最も新しい学部・研究科だ。昨年度に自然科学研究科が改組されて大学院海事科学研究科が設置され、今年度には学部3課程が3学科に改組されるなど、同学部・研究科では教育の改善が図られている。変容する大学教育の中で同学部・研究科が取る道とは。石田廣史・同研究科長に話を聞いた。【6月9日 神戸大NEWS NET=UNN】?
日本は島国の為、海運は古くから重要とされている。西日本の海事教育の最先端を担っていた旧神戸商船大の流れを汲(く)む同学部・研究科は、海や船に直接的に関係するプロフェッショナルは勿論のこと、多岐に亘る海事関連分野で国際的に活躍する人材を養成する場所でもあるのだ。
その目的に合わせた改革の中に、今年4月から始まった「関西海事教育アライアンス」がある。神戸大大学院海事科学研究科、阪大大学院工学研究科および大阪府大大学院工学研究科がアライアンス(同盟)を組み、3大学院研究科の博士前期課程学生を対象にした海事関係の授業が阪大中之島センター(大阪市北区中ノ島)で行われている。参加している学生は60人ほどで、「それぞれの大学が培ってきた海事教育・研究の内容を学ぶことができ、新たな発見がある」と学生から好評であるという。始まって間もない試みに、「関西の海事教育を活性化し、リフレッシュさせたい」と石田研究科長は期待を込める。
学部では今年4月から海事技術マネジメント学課程、海上輸送システム学課程、マリンエンジニアリング学課程の3課程を海事技術マネジメント学科、海洋ロジスティクス科学科、マリンエンジニアリング学科の3学科に改組した。「学部教育における各学科の教育内容や特色をより際立たせることができ、また、課程よりも世間で広く使われている学科を採用することで、一般受験生に各学科の教育内容と特徴を正確に伝わりやすくする意図もある」(石田研究科長)という。
海事科学部では自然科学系の教員が多く社会科学系の教員が少ないため、他学部との交流、特に「社会科学系の学部との連携を特に続けていきたい」という石田研究科長だがネックがある。たこ足大学と呼ばれる神戸大の欠点である、他学部との距離だ。
理学部、法学部、経済学部、経営学部の講義を履修できる制度を設けているが、キャンパスが離れているため履修状況が良くない。また、教養原論の講義(集中講義)の一環として六甲台に学部がある学生が深江キャンパスに来ることはあり、深江キャンパスの教員が同地区へ講義に行くことがあるが、同地区の教員が深江キャンパスに講義に来ることはないという。「両大学統合当時、神戸市交通局に深江・六甲台間の市バス運行を要請したが、困難という返事で、大学当局もそのような余裕はないとの返事であった」と石田研究科長は渋る。六甲台との距離を縮めることが今後の課題だ。
また、海事科学部、研究科のみならず、いまや神戸大のシンボルでもある海事科学研究科附属練習船「深江丸」。この練習船には毎年多くの学生が乗り込み船舶運航のノウハウを学んでいる。1987年年に3代目として竣工した深江丸は現在20歳となり、船の寿命からするとかなり老朽化している。深江丸の代船要求は毎年文科省にしているが、予算化は容易ではないのが実情。「早く新・深江丸を作りたいですね」と石田研究科長は笑顔だ。
去る者もいれば、新たに学びの門を叩く者もいる。石田研究科長は現代の若者に必ずしも憂慮してはいない。阪神・淡路大震災が発生した際、救助のため懸命に活動した学生の姿を見ていたからだ。「むしろ、今の若者にも感心する点は多くある。」と話す。また、孔子の言葉である「学びて思わざるは則ち罔し(くらし)、思いて学ばざるは則ち殆し(あやうし)」を挙げ、「広い視野を持ち、目的意識を持って学習してほしい。そして、あらゆる事にチャレンジ精神を持ち、失敗を恐れずに取り組んで欲しい。」と学生にエールを送った。
変容する学部、大学院。海事教育も変容を遂げようとしている。
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