9人が舞台デビュー 新人寄席

神戸大落語研究会による「新人寄席」が9月26日、神戸学生青年センター(神戸市灘区)で行われた。新人9人が学生、市民を前に初舞台を飾った。【9月27日 神戸大NEWS NET=UNN】

 今年落語研究会に入った会員は9人。甲家寅久さん(かぶとや・とらっく=発達・1年)、甲家もて太さん(発達・1年)、甲家盛津さん(かぶとや・もるつ=経済・1年)、みなと家だいぶさん(発達・1年)、拡益亭彗架さん(かくえきてい・すいか=経済・1年)、可愛家ささみさん(法・1年)、可愛家すみびさん(国文・1年)の噺(はなし)を、可愛家つくねさん、可愛家ねぎまさんによる三味線が盛り上げた。
 新人噺家7人と甲家天棒さん(法・2年)、甲家備樽さん(法・2年)、甲家びす太さん(工・2年)らを交えての大喜利では会場からテーマを募集することで、来場者も大喜利に参加した気分に。
 この日はチケット売りなど裏方に徹した第43代会長のみなと家るああさん(経済・3年)は「パワーがあるね。自分も(噺を)やりたくなった」と後輩の晴れ舞台を羨んだ。

<めっちゃ楽しい 甲家盛津>
Photo 盛津さんは、昨年の六甲祭でゲスト出演した桂ざこばさんの師匠である桂米朝さんが得意とする「狸の賽」で盛り上げた。ある時、子供が仕掛けた罠にかかっていた化け狸は親方に助けられた。狸は恩返しをしようと山里から親方のもとを訪れる。そこで、親方は狸が賽(さい)に化けることで自分に有利な目を出し、ひと儲けしようと考えた。親方は化け狸扮する賽を携え、賭場に。賽の出た目を賭けるチョボ一で、普段は負けている親方が連戦連勝する姿に周囲は不審がる。周囲の目を気にせず賭けを続けていくが、遂に狸が化けられない目である5が出てしまう。
 「めっちゃ楽しかったです」。開口一番そう話す新人に笑顔が絶えなかった。「賭場での盛り上げとか工夫しましたね」と振り返る盛津さん。有名ビールにちなんだ名前は先輩からもらった。中学、高校時代は陸上部に所属していた。大学に入って初めての落語。「頑張っていきたい」と目を輝かせていた。

<女でもすごいといわせる 可愛家すみび>
Photo 上方落語家の故・桂枝雀さんが得意としていた「八五郎坊主」を披露。
 主人公の八五郎はひょんなことから出家を決意、知人の手助けにより「ずく念寺」と呼ばれる寺で坊主となり、名前を「法春」と改める。そこで、「法春」は「麻疹(はしか)も軽けりゃ、疱瘡(ほうそ)も軽い」という洒落(しゃれ)を「はしかも軽けりゃ法春も軽い」と入れ違えて覚えてしまう。坊主となり、気分よく町に繰り出す「法春」。ある時、知人に名前を聞かれるも、名前を思い出せない。悩んでいるうちに「はしかも軽けりゃ法春も軽い」を思い出す。
 「そうだ、あっしの名ははしかだ」。はっきりとした声ですみびさんが噺を終えると、会場がどっと沸いた。「会場の雰囲気とか感じ取れる余裕がなかった」。今はまだ半人前。しかし、近年の神戸大落語研究会としては珍しい女性噺家は野心に燃えている。「女でもすごいといわせてやる」。

<緊張した みなと家だいぶ>
Photo ある時、ある2人は、ウナギを掴むことができない店長が経営しているウナギ屋へ行く。店長が舟の中で泳いでいるウナギを掴もうと悪戦苦闘している様子を見かねて2人は助けることに。2人によるアドバイスもあり、遂に店長は狙いのウナギの首根っこを掴むも、うなぎは店長の手から逃れようと暴れる。前へ前へと滑るウナギを必死に確保する店長はいつしか店の外に飛び出しどこかへ行ってしまう。
 「どこに行くかはウナギに聞いてください」。そうオチをつけると、だいぶさんは一礼。途端に会場内で拍手が響いた。噺の途中、だいぶさんは顔を大きく変化させ、登場人物の感情を表現。その大胆な感情表現に、会場から思わず笑い声も。「満足です」。だいぶさんは学生の前では初めての寄席に安堵の表情を浮かべた。

<うまくなりたい 可愛家ささみ>
Photo 甚兵衛から養子に行くことを進められた男。養子先は大きな屋敷を持ち、裕福な家庭。しかし、娘には問題があった。夜中になると、首が伸びてしまうのだ。最初は養子になることを拒否していた男だが、後にも退けず受け入れる。見合いの夜、2人はともに寝ることに。夜中、娘の首が噂通り伸び始め、男は驚がくする。慌てて、甚兵衛のもとに駆け寄るも、甚兵衛は早く娘のもとに帰るように指示し、こう返す。「首を長くして待っておられる」。
 老人ホームなどで噺をしたことはあったが、学生の前では初めての寄席。「反応がすごくよかった」と笑顔を見せるささみさん。出来については「自然にできた」と評価しつつも、「大事なところで噛んだ」と反省の言葉も。「練習してうまくなりたい」と向上心を燃やす。

<笑ってくれた 甲家寅久>
Photo 千のうち三つしか本当のことを言わない男「千三屋」。この嘘つき男がある人に、「日本を旅した」と偽り、木曽で巨大イノシシと戦ったなど、嘘の道中話をひたすら披露する「鉄砲勇助」を寅久さんは披露した。嘘で固めた「千三屋」の矛盾した話が、寅久さんの口から次々と飛び出す度、会場からは歓声があがった。
「ウケを狙った部分で笑ってもらえた」。小、中、高と元陸上部に所属していたため「寅久(トラック)」の名を先輩から与えられた新人は安堵した。

<予想よりも緊張した 拡益亭彗架>
 転失気(てんしき)とは医学用語で屁のことを指す。ある時、住職のもとに医師が診察に訪れる。そこで、医師は「転失気はありますか」と問う。住職は「テンシキ」の意味がわからなかったが、知っているふりをして処理をしてしまった。そこで、住職は「テンシキ」を知っているかのように振る舞いながら、「前にお前に教えたはずだ」と弟子の珍念に「テンシキ」について調べるように伝える。住職を診察した医師のもとに訪れた珍念は転失気が屁であることを知る。しかし、知ったかぶりをした住職に復讐をしようと偽って、「テンシキ」が呑酒器であると伝えた。それを鵜呑みにした住職はあくる日に診察に来た医師に「テンシキを出す」と話し、呑酒器を出した。医師は驚いて住職に問う。「寺方の事でございますから、さぞかし古い時代から「テンシキ」と呼んでおられたのでございましょう」。住職は苦し紛れに返す。「ブーブー文句をいう奴がいますから」。
 「予想よりも緊張した」と振り返るのは彗架さん。「だけど、予想よりもいい緊張だった」と確かな手ごたえを感じていた。各益亭では、電車にちなんだ名前で先輩から命名される。「彗架」は関東圏で主に使われているICカードの愛称からという。

【お詫びと訂正】記事中「えぇ、平安奈良時代から」の部分を「ブーブー文句を言う奴がいますから」に訂正しました。読者並びに関係者各位に多大なるご迷惑をおかけしましたことをお詫びします。(10月1日午前1時46分・編集部入力)

<またやりたい 甲家もて太>Photo? 地位が異なる男女の結婚模様を描く「延陽伯」を披露したのはもて太さんだ。
 下町に住み無妻の男はある時、甚兵衛にとある女性「延陽伯」との結婚を勧められた。しかし、その女性には問題があった。女性は幼少期に京都の公家に奉公していたこともあり、言葉づかいが全く異なっていた。男はそのことを了承し、結婚を果たした。しかし、実際に共同生活を始めると、言葉のギャップに予想以上に苦しむはめに。名前を聞き出すこと、食事をとることもままならない。
 この長い噺をすると、今までは声が枯れていたというもて太さん。今回は枯れなかった。長いセリフも噛まずに言えた。「緊張はなかった」とニヤリ。続けて、もて太さんは「またやりたい」と残した。

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