【12月号掲載】ズレてる?神大の政策 

グローバル人材育成を目的とした教育プログラム導入が進んでいる。文部科学省の「スーパーグローバル大学等事業」の指定37校に落選した神戸大だが、すでに2012年に同省の「グローバル人材育成推進事業」の採択を受けている。いずれも国際的産業競争力や他国とのつながりを強化するため、グローバルな舞台で活躍する人材を育成する事業だ。大学関係者は「スーパーグローバルの補助金がなくとも十分育成できることを示したい」と息巻く。しかしプログラムの有効性や構想の実現に関するさまざまな課題が、学生の声から浮かび上がってきた。

国がグローバル人材の基礎に掲げるのが「外国語能力・コミュニケーション能力」だ。神戸大は学生にこれらの能力を身につけさせるため、昨年度から「グローバル英語コース(GEC)」を導入。また海外留学促進のためクォーター制移行計画などを打ち出している。

目玉となるGECでは、文系6学部の1年生全員にTOEICかTOEFLを受験させ、成績上位者を選抜して英語の発展クラスを編成。春休みに希望制で3週間の海外語学研修を実施、研修参加者のクラスでは実践会話や英語論文の執筆指導が行われる。

しかし、初年度に受講した2年生からはさまざまな声が聞かれる。ハワイでの語学研修に参加した学生(発達)は「研修先では神大生だけで授業を受けていたので、現地の人と英語で会話する機会があまり無かった」と振り返る。ニュージーランドでの研修に参加した学生(国文)も「刺激にはなったが、帰国後の授業でのフィードバックが弱い」と話す。英語論文は研修までに一通り書き上げてしまうため、2年前期の授業ではその微調整をするだけで終わってしまう。「結局、英語力の向上は個人のモチベーション次第。与えられた課題をこなすだけの学生もいた」という。2年時のTOEIC等の受験率は30%前後に留まり、プログラム終了後に英語力を試す学生も少なかった。

また海外研修に行かない特別編成クラスにいた学生(発達)は「授業内容は教科書の和訳など、普通のクラスと全く変わらず無意味だった」と実情を話す。

◆重い留学費用

海外に出るには費用が大きな問題となる。GECの海外研修も実費で最大47万円負担が必要。研修に参加しなかった学生は「大学から数万円の補助は出るが断念せざるを得なかった」と話す。長期留学の場合は費用もより多額に。ベルギーに交換留学中の学生(法・3年)は、留学先の決定が遅れたという理由で奨学金を受給できなかった。

費用以外の面でも、単位互換可能な授業に制限があるなどの問題がある。「留学者を増やしたいなら、制度をいじるよりこうした状況を改善してほしい」と留学中の学生は訴える。

◆産業用人材?

グローバル人材育成に懐疑的な声もある。神戸大では学生の「問題発見能力」を重視。幅広い教養と専門知識をベースに、分野や国を問わず存在する問題の発見と解決を主導する人材育成を目指す。しかし文科省は、国際的な産業競争力強化に貢献する人材像を中心に掲げている。ある学生(国文・3年)は、「(大学が文科省の意向に沿い)産業界にとって活用しやすい『人材』育成が中心になってしまわないか」と懸念する。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

月別アーカイブ

サークル・部活総覧

  1. 神戸大のサークル・部活のツイッター・アカウントを探せるぞっ!クリックすると、『神大PORT…
  2.  神戸大学の文化系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  3. 神戸大学のスポーツ系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  4. 神戸大学の医学部のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随時更…
ページ上部へ戻る