【11月号掲載】クォーター制 徹底解剖

 神戸大は2016年度から「2学期クォーター制」を導入する。前期・後期の授業期間をそれぞれ半分に分けて各8週で授業を行う制度で、各授業期間を「クォーター」と呼ぶ。医学部や一部の研究科を除く全学生を対象に導入される予定で、9月から10月にかけて学生向けの説明会が行われたが、学生の理解度はまだ低い。今回ニュースネット委員会では、制度の詳細を導入の目的や授業の変更など4つの項目に分けて解説する。

◇目的と経緯は?

 2学期クォーター制は、計画の段階から海外留学などの促進を第一目的としている。大学は「自ら地球的課題を発見し、その解決にリーダーシップを発揮できる人材」の育成を目標とする、教育改革を2016年度から行うと発表した。その一環として、クォーター制が実施される。

 導入により、学期の途中でも一つのクォーターと長期休暇を組み合わせれば、海外留学や海外インターンシップ、ボランティアなどの学外活動に参加しやすくなる。

 また、授業は週1コマ×8週または週2コマ×8週で「クォーター開講科目」に変わる。クォーターごとに授業が一区切りとなるので、従来より短期集中的に学修できるようになるという。

 11年に東京大が入学時期を秋に移す構想を立てたことを受け、神戸大でも秋入学の実施を検討したが、実現が難しいと判断。他大学でも導入を進めているなど、実現性のあるクォーター制導入の検討に切り替えた。

 海外では秋始業が主流で、クォーター制を導入する大学も珍しくない。制度を導入することで、海外からの留学生を受け入れやすくなるなど、大学のさらなる国際化を図る。「国際化」と「短期集中学修」を掲げた2学期クォーター制で、神戸大はどう変わるのか。

151119qurter2授業はどう変わる?

 全学共通科目の多くはクォーター開講科目となる。また補講に対応するため、6限が午後6時50分から午後8時20分に新設される。だが、学期中のクォーター間に休みは設定されず長期休暇の期間変更はない。

 現在教養原論として開講されている科目は「基礎教養科目」と「総合教養科目」に分かれる。基礎教養科目では専門分野外の基礎的な内容を教える。総合教養科目は分野をまたぐ総合的な内容の授業となる。教養原論の変更は、専門分野外の基本的な物事の考え方を学ぶことで、学生の多角的な視点を養うことが目的だ。

 現時点の在学生は2016年度以降、所属学部が指定した教養原論の必要修得単位の不足分を、どちらかの科目から履修することになる。履修に当たっては抽選登録が必要で、登録期間は年3回。16年度以降の開講科目の内容が、15年度までに修得した科目と重複している場合は履修できない。

 教養原論以外の全学共通科目はこれまで開講されていた「旧科目」に代わり「新科目」がクォーター開講科目として開講される。旧科目に対応する新科目二つに合格することで、旧科目の単位修得とみなす「科目の読み替え」を実施する。科目の対応に関しては、うりぼーネットに掲載予定のB表(新旧対応表)で確認できるようになるという。

 短期集中型の授業を行えることはメリットだが、試験がクォーターごとに行われるため試験の回数が増え、学生の負担増加につながる。試験の難易度や方法に関してどのような見直しがあるかは未定だ。

◇単位と卒業はどうなる?

 成績はクォーターごとに発表されるが、単位の修得は現行通り学期末のまま。そのため、卒業時期も3月末または9月末と変更はない。

 履修登録は年2回で、上限単位数は現行通り学期または1年ごとに設定される。取り消し期間は各クォーターごとに設けられる。

 留学などの学外活動で休学しても、授業が履修しやすいような制度もできる。学期開始前から休学しており第2・第4クォーター開始までに復学する場合、所属学部の教務担当係に申し出て、授業開始から1週間以内に届けを提出すれば履修できる。第1クォーターは在学し、7月から9月に休学しても、学期末に第1クォーターの単位の修得が可能。第3クォーターの場合も同様に、単位の修得ができる。

 病気や忌引きなど、やむを得ない理由で試験を欠席した学生を対象とする「追試験」はクォーターごとに実施。しかし試験不合格者のうち、特定の条件を満たした学生を対象とする「再試験」は学期末に行われる。なお、学部や授業科目で対応が異なるため、授業を開講する学部の教務担当係に確認する必要がある。

 卒業に必要な単位数は入学時の規則で定められたものから変更はない。ただ、履修登録期間や授業の変更点は、キャンパス内の掲示板やうりぼーネットを確認し、卒業に必要な単位を修得するよう注意が必要だ。

◇インターンの経験者は?

 大学側はクォーター制の導入で留学や海外インターンシップなどに参加しやすくなると説明している。当事者はどのように考えているのだろうか。

 久保陽香さん(経済・1年)は、8月から9月にかけてフィリピンで6週間のインターンシップに参加。現地の子どもたちを支援するNGOで、書類の翻訳作業などに携わった。

 着任後3週間は職場の環境に適応するので精一杯だったが、仕事に慣れると現地の課題が見えてきた。「子どもたちは貧しく栄養の偏った食事しか食べられず、問題だと思った」と話す。上司と相談し、ウェブサイトにレシピを掲載して食事提供の資金を募集。約5万8千円を集めた。しかし「目標額には達しなかった。これからというところでインターンが終わってしまった」と悔しさをにじませる。

 今後はクォーター一つと長期休暇を組み合わせることで、在学したまま学外活動に参加しやすくなる。久保さんのインターンをあっせんしたアイセック神戸大学委員会でも、好機を生かすべく動いている。ビジネス系の海外インターンでは、期間の短さを理由に企業が受け入れを渋ることが多かった。より長期の参加が可能になることから、アイセックは企業への営業を強化する方針だ。斎藤孝俊副代表(経営・3年)も「学生の選択肢が増えるのは良いこと」とクォーター制に期待を示している。

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