発達科学部の専門科目「産業社会環境論A」の講義が6月13日にあり、阪神・淡路大震災の借り上げ復興住宅問題を著書で取り上げた市川英恵(はなえ)さん(2016年・発達卒)がゲストスピーカーとして登壇した。
同科目では貧困や医療などの社会保障問題を、国内外の災害事例を通して考える講義が展開されている。市川さんは、科目の担当教員、井口(いのくち)克郎准教授のゼミ出身で、講義に登壇するのは昨年に続き2回目となった。
借り上げ復興住宅は震災で家を失った被災者向けに、兵庫県や県内の市が民間から借りた住宅を安い家賃で又貸しする制度。入居者の中には、自力での再建が難しい高齢者や低所得者も多く、建設費など初期投資が不要な復興支援として導入当初は画期的とされた。一方近年は20年の入居期限を理由に、行政が入居者に退去を求め提訴し、行政と住民の対立が生じている。
市川さんは大学時代に、サークル活動をきっかけに入居者らと交流し、実際に退去要求を受けている高齢者に取材し、卒業論文や自著『22歳が見た、聞いた、考えた「被災者ニーズ」と「居住の権利」』(3月に出版)にまとめた。
講義では、入居時に行政から「20年の期限付き」との説明を受けていない住民がいることや、高齢者にとっては引っ越しで住環境が変わること自体が心身を害するリスクだと説明。「住まいはただの箱ではない。周りに友達がいたり、かかりつけの医師がいたり、すべてを含めて住まいだ」と「住み続ける権利」の概念も踏まえ、問題への関心を持つよう呼び掛けた。
受講した生田邦紘さん(発達・2年)は「問題の存在を知らなかった。ただ家があればいいわけではないことは新たな発見だった。財政負担のこともあるので、行政の考えも含めもっと知りたいと思った」と話した。
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