【コラム伏流水】メディアの役割

 新聞部に入部してはや3年、「新しい出来事」を追い続けてきた。報道は鮮度が重要だと先輩から聞き、情報の新しさに大きな価値を置いた。しかし他の報道の価値を感じる日がある。阪神・淡路大震災が起きた1月17日だ。

 私たちは震災追悼行事を毎年取材する。取材中に震災経験者の声を聞く機会も多い。最初に経験者の声を聞いたのは1年の時。学生震災救援隊が開く、鍋を囲みながら震災を語り合う会だった。

 最も印象に残っているのは、和やかに談笑していた女性が突然見せた涙。「当時のつらかったことを思い出した」と、涙ぐみながら震災直後の避難所生活を語ってくれた。十分な数の風呂がなく自衛隊の風呂に入っていた、場所によって支援に差があった??。20年以上前の話に情報の新しさはない。しかし、この涙を伝えなければならないと思った。「伝え手」の自覚が芽生えた。

 学内で行われる献花式では、震災で犠牲になった学生の話を遺族から毎年聞く。「優秀な子だった」「将来の夢に向かい勉強していた」遺族が語る子の姿は、私たちとさほど変わらない。何度も同じ遺族の話を聞くと、犠牲になった学生を知り合いのように感じる。24年前の震災が身近な命を奪った。震災の重みが胸に迫る。何度も伝わることで、記憶は深く刻み込まれる。

 メディアは主に新しい出来事を伝える。だが風化してはならない記憶を伝え、定期的に呼び起こす役目も担っていると思う。

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