コロナ禍の教育と学生生活① オンライン授業を問う

 新型コロナウイルスの発生から約2年、オンライン授業中心の大学生活を学生はどう感じているのか。また、大学教員はコロナ禍での学生生活や教育の在り方をどのように捉えているのか。学生へのアンケートや大学教員への取材を行うことで、学生と教員の意識の違いや、よりよい大学教育、学生生活の在り方が見えてきた。<佐藤ちひろ、笠本菜々美、島袋舜也>

(写真:神戸大 六甲台本館 六甲台第1キャンパスにて)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け大学の在り方は大きく変化してきた。対面授業が減少し、オンライン授業が中心になったことや課外活動に制限が課されたことは学習形態のみならず、学生生活そのものに影響を及ぼした。

 神戸大の藤澤学長は2021年4月16日、「学長からの学生に対するメッセージ(学長からの学生に対するメッセージ | 国立大学法人 神戸大学 (Kobe University) (kobe-u.ac.jp)」で、「私たちは新型コロナウイルスの脅威と向き合い、様々な手段を講じて、皆さんが授業をはじめ、研究、活動など、有意義な学生生活を送ることができるよう最善を尽くしてまいります」と述べている。コロナ禍での教育の在り方に対して、学生、そして教員は何を感じているのか。ニュースネットは学生に対してアンケートをとり、教員にはインタビュー形式の取材を行った。

 ニュースネットは2022年3月1日~3月8日の間、神戸大の大学生・大学院生を対象にTwitterとGoogleフォームを用いて、オンライン授業に関するアンケートを実施し、Googleフォームでは173人から回答を得た。この記事では、その結果をもとにコロナ禍での授業や学生生活に対する学生の満足度や意見を紹介する。

 アンケート回答者の学部、学年の内訳は以下のようになっていた。特に1年生と2年生が約9割を占めていた。また、回答者の49.1%が自宅生、50.9%が下宿生だった。

9割の学生が「ほとんどオンライン授業だった」「オンライン授業が多かった」

 2021年度のオンライン授業と対面授業の比率について尋ねると、約9割の学生が「ほとんどオンライン授業だった」または「オンライン授業が多かった」を選択した。また、2021年度の比較的コロナが落ち着いていた時期に大学に通った回数については、週3回以下という回答が全体の約7割を占めた。

「ほとんどオンライン授業だった」学生の2人に1人が不満足

 2021年度のオンライン授業と対面授業の比率が「ほとんどオンライン授業だった」と回答した学生はオンライン授業と対面授業の比率について、約半数が満足していないと回答した。

 

 また、「満足している」理由としては、「通学時間がなくて楽だったから(医・1)」や「大学に行かなくてよく、自分のしたい活動に時間を割けるので!(済・2)」というような、利便性を挙げる学生が多かった。

 「どちらともいえない」理由としては、「オンラインは楽だから良いなと思いつつ、対面授業時代よりモチベーションが上がらず、授業後に図書館へ寄って勉強、なども減ってしまったので、オンライン中心の現状が嫌じゃないけどダメだなあと(文・3)」や「オンライン授業はよくも悪くも学生にとって自由。学校に来て、ある程度時間が拘束された方がいいと思ったこともある。あと、オンラインだと学生同士のつながりがほぼない。二回生だというのにキャンパスライフなぞ経験したことがない。ただ、1時間半かけて学校に行くのはしんどいという気持ちもある(法・2)」のように葛藤を表す意見がみられた。

 一方、「満足していない」理由としては、「対面授業の方が授業の雰囲気が感じられたり質問がしやすかったりするなど、より身につくため対面をもっと実施してほしかった。また、対面とオンラインが授業によって違うと予定が立てづらいため対面に統一してほしい(工・3)」や「入学して2年が経つが教室で講義を受けたのが10回もなく、サラサラ普通の講義を受けたい。また、オンライン授業だとどうしてもだらけてスマホなどをいじってしまう(営・2)」、「他の学部や大学で対面授業が少しずつ実施されている中、対面による授業が1度もなく疎外感が強かった。昨年度のリアルタイム授業のアーカイブ動画を今年度の授業動画としている講義があり、違和感があった(法・2)」など様々な意見があった。

5割が「課題が多かった」 

 2020年9月に神戸大大学教育推進機構が実施した、遠隔授業に関するアンケート(20201127-01 (kobe-u.ac.jp))では一定数の学生が課題の多さを問題にしている。「2021年度の授業で出された課題は多いと感じましたか」という問いには、「どちらともいえない」が4割、「多かった」、「かなり多かった」と回答した学生が5割という結果になった。    

 学生の意見の中には、「オンラインへの出席と称した課題が多すぎた(工・3)」や「オンデマンドであることをいいことにリアクションペーパーに過剰な文字数を要求する先生が多く、それが重なるとレポートレベルの分量となり地獄(法・1)」、「課題の量を減らしてほしい。一つ一つはそんなに重くなくても、複数授業で課題が出ると課題に追われる(法・1)」といったものがあった。

オンライン授業、対面授業それぞれにメリット・デメリット

 オンライン授業を受けて感じたメリットとしてあげられた意見としては、「時間の融通がきく。コマが入っている時間に用事(イベント参加・アルバイトのシフト・部活動の練習)をこなし、帰宅後の時間に受講を振り替えられる。従来より日程調整が容易になり、より多くの事ができるようになった。移動時間分を他の作業に使える。動画を早送り再生して重要でない部分を飛ばせる。逆に十分に考えたい時は動画再生を止めて自分に合ったペースで学べる。聞き逃した部分を繰り返し再生できる(法・1)」や、「無駄な通学時間を省ける。オンデマンドなら好きな時に必要なだけ授業を受けられるので学習に過不足がない(文・1)」、「一日中オンラインである場合、家から動く必要が全くなく、限りなく楽であること。更に登下校などの時間がないため、家で過ごす時間にゆとりが多いこと。オンデマンド授業では時間的制約もかなり小さく、とにかく時間的に自由度が高いこと(農・2)」、「学校に行く時間分を睡眠の時間に充てれたこと(工・1)」 など、時間の有効活用ができるという声が多くあった。

 一方で、デメリットとしては「やる気がなくなります。長時間の動画視聴はとても苦痛です。横のつながりもないままオンライン継続なので友達や先輩と出会えていません。履修登録やテストなど相談する人がいなくて不安も感じました。会話したり相談する人がいない、ずっと自宅で一人は本当に楽しくないです(済・2)」や「パソコンを使って1人で勉強をするという構図が、自学習している時とあまり差がなく、頑張って大学に進学した意味を見失いそうになること(農・2)」、「教授との接点が減ってしまっている。先生の顔すら分からず履修し終えた授業すらあった。オンデマンド授業は貯めてしまう(法・1)」、「孤独感 やる気の喪失(法・1)」、「友達0人。学力の向上が全く感じられず。連絡・掲示の確認が困難(法・2)」、「孤独 対面での良い緊張感がない(工・2)」、「集中力を保つのが難しく感じる(理・2)」、「授業を受けている実感を持てない。これまで学校に行くこと自体が勉強のモチベーションの保ち方であったため、勉強が楽しいと思えない(法・1)」など特に「孤独」や「集中力が保てない」という意見が目立った。

画面を見続ける大変さ

 オンライン授業では、長時間画面を見続けることになる。ニュースネットがTwitter上で「授業がある日、授業のために1日平均何時間パソコンやスマホなどの画面を見ますか。(リアルタイム・オンデマンド含む)」というアンケートを行うと、以下の結果になった。

 オンライン授業のデメリットとしては、「画面を見続けるのがしんどくて、真面目に全ての授業を受けられない(法・1)」、「四六時中パソコンに向き合っていなければならないので、目が疲れる。またずっと家にいるので精神的にもきつかった(文・1)」という意見もあった。

2022年度に望む授業形態は人それぞれ

 2020年度に望むオンライン授業と対面授業の比率については、「オンライン授業多めを望む」学生が3割、「オンライン授業と対面授業半々を望む」学生が2割、「対面授業多めを望む」学生が2割、「対面授業やや多めを望む」学生が2割、「オンライン授業やや多めを望む」学生が1割程度とばらつきのある結果になった。 

 その他(自由記述)の回答としては、「対面授業とオンライン授業の混在を一番望まない」や「流行の程度に合わせて切り替えてほしい」という意見があった。

 また、「全ての講義がオンライン・対面両方で受講可能な場合、週に何回大学へ通いたいか」という問いに対しては、以下のようになり、週に3回以上が5割強、2回以下が4割強を占めた。

学生の多くが教養科目はオンライン、専門科目は対面を望む

 「教養科目、専門科目の開講形式として望ましいと思うのはどれですか」という問いに対しては、教養科目はオンラインを希望する学生が7割、専門科目は対面を希望する学生6割弱という結果になった。

 アンケートの後半では、オンライン授業で困ったことや大学に対する要望などについて学生から意見を集めた。

 本記事は「コロナ禍の教育と学校生活②『友達0人』と答える2年生も」に続く。

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