学生の「発信」問われる自律性② 大学からの指摘

  12月12日付で、KooBeeが自身の運営する学生情報サイト「WeeBee」内の一部コンテンツを削除したことを報告した。削除された企画は、2016年に制作されたものだった。近年、フェミニズムやMeToo運動の影響もあり、不特定多数の目にとまるコンテンツにおいて、その表現が適切であるか問われる機会が増えてきた。今回、コンテンツに対する指摘が行われたのはKooBeeだったが、不特定多数の人を対象に情報発信をするという機会は、少なくない学生が経験することだろう。情報の受け手の意識が高まったことで、制作者にも相応の対応が求められている。何かを制作し、発信する際、大学生として、どのような意識が求められるのだろうか。<奥田百合子、佐藤ちひろ>

(写真:神戸大六甲台第一キャンパス)

この記事は、「学生の「発信」問われる自律性① コンテンツ削除問題」から続きます。
https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/b477f3c754f0c702278a0d34d79a1b20

大学は「明らかに逸脱」と指摘

 学生委員協議会は審議に基づき、「明らかに逸脱した内容である『僕だけの彼女』については掲載を見合わせてもらうとともに、それ以外のコンテンツについても、閲覧者がどう受け取るか考慮した上で、どのような内容のコンテンツを掲載するか見直しを進めてほしい」旨をKooBeeに指導した。そして10月3日には、「僕だけの彼女」がWeeBeeから削除された。学生委員協議会は、「僕だけの彼女」の掲載差し止めだけでなく、謝罪文と再発防止策を掲載するようKooBeeに指導した。また、ほかのコンテンツにも性的なイメージを喚起するものがあると指摘した。
 10月18日には、「美男美女」という企画の複数のコンテンツがすべて削除された。「美男美女」は、六甲祭や卒業式で撮影した神戸大生の写真を掲載していたコンテンツ。(前述の学生団体は「美男美女」に関しては何も報告を行っていない)

受験生含め不特定多数の人が閲覧

 報告した学生団体の学生は、「『僕だけの彼女』を見たとき、怖いと思った。たくさんの学生が見るのに、ストーカーや盗撮など、犯罪を助長させる内容だった。それと同時に、性被害の経験があったり、トラウマがあったりする学生も少なからず存在する可能性があることを考えると、つらい思いをする学生がいるのではないかと思った」と話す。
また、7年前に公開されたコンテンツが、現在まで公開され続けていたことにも問題があると考えているという。「『僕だけの彼女』が掲載されることを周りが容認し続けていたということになる。描写が性暴力になるという意識が欠けている。大きい団体として、意識について話し合ってほしい」と指摘した。
 他にも、「2016年に公開されたコンテンツに関して、動画内の人にどういう許可を得たのかが気になる。リベンジポルノなど、インターネットを介しての性被害も問題になっている。モデルの学生は、大学卒業後にもコンテンツが掲載されていることを知っているのか。知ったうえで許可しているのか気になった」と問題を挙げた。
「神戸大の受験生にも影響力を持っている媒体であるのだから、問題があると思う。苦手な人は見なければいいという人もいるが、WeeBeeは、不特定多数の人が、見たくなくても目に入ってしまうコンテンツ」と話す学生もいた。
 団体の代表は、「例えば、『美男美女』はルッキズムの問題で、議論が分かれるかもしれない。しかし、今回は、誰が見てもだめだと思うものが公然と公開されていたことが問題」とまとめた。


(画像:WeeBeeのスクリーンショット)

時代に合っていないという懸念

 同時期に削除された「美男美女」企画についてKooBee代表者によると、元々KooBee内で時代に合ってないのではないかという懸念もあり、コロナ禍以降新しい企画は行っていなかった。一方で、元々あるコンテンツを消すことに関しては抵抗があった。そのような状況で、今回大学から指摘されたことをきっかけに、「美男美女」企画がメインの活動ではないこと、出演者は全員卒業していることなどを考慮し、消すならタイミングは今だと考えたという。削除を決めたことはあくまで自主的な判断だとした。一方で、仮に何の指摘もなかった場合、「美男美女」企画を掲載し続けていた可能性はあると話した。
 
「大学の名を背負っている」責任

学生委員協議会担当者は、「学生委員協議会としては、課外活動団体の自主的な表現行為は、最大限尊重するという立場ですが、KooBeeが神戸大学の名を背負った課外活動団体のひとつであることを踏まえ、
・掲載基準を明文化し、KooBee内での啓発・体制構築を進めてもらうことが再発防止につながること。
・犯罪を許容しているように受け取られかねない、明らかに逸脱した内容については掲載を取りやめてもらうこと。
・それ以外のコンテンツについても、受け手にどのように伝わるか充分に考慮し、少しでも多くの人に共感してもらえるように、既存コンテンツの見直しや今後の制作・発信を心がけてほしいこと。
を指導しています」とコメントした。

 今回、コンテンツに対する指摘が行われたのはKooBeeだったが、不特定多数の人を対象に情報発信をするという機会は、少なくない学生が経験することだろう。何かを制作し、発信する際、大学生として、どのような意識が求められるのだろうか。

 次の記事「学生の「発信」問われる自律性③ 表現の自由とのはざまで」(https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/3a19ef307ce616f7e4899af9a93b532b)では、ジェンダー理論を専門とする稲原美苗准教授とメディア論を専門とする小笠原博毅教授に話を聞き、表現の自由と情報の受け手への配慮をどのように両立すべきかを考える。

KooBeeさんに対する誹謗・中傷、攻撃的な発言はお控えください。

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