inkに集え② 「行動力ある学生を」カフェ設立の経緯

 神戸大六甲台第1キャンパスから徒歩3分の場所にたたずむ「ink BOOKS & COFFEE」。5年ほど前から神戸大生を中心とした学生が運営し、隠れ家カフェとして地域住民や学生に親しまれた。2023年2月に一度休業し、4月14日に営業形態を変更してリニューアルオープン。inkオーナーには、震災の経験を通じ、行動力ある若者を育てたいという思いがあった。<笠本菜々美>

(写真:店の外観。2023年4月22日撮影)

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▽inkに集え① 六甲台第1キャンパス横、学生運営のカフェ&バー
inkに集え① 六甲台第1キャンパス横、学生運営のカフェ&バー | 神戸大学NEWSNET委員会 (kobe-u-newsnet.com)

 ink設立には、オーナーである「iina」さんの震災経験やボランティアの経験が大きく影響している。オーナーと東日本大震災の復興支援ボランティアで出会い、今はオーナーと共にinkを支援する「リョウ」さんに話を聞いた。

阪神・淡路大震災とのつながり

 オーナー(「iina」さん)は大学生のとき、阪神・淡路大震災を経験した。色々なところで叫び声を聞き、建物に取り残された人を見たが、怖くて、必死で逃げたという。
 「リョウ」さんは、「阪神・淡路大震災が起こってすぐ、東京にいる人に大変だと電話をしたら『へえ、そんなことがあったんだ』と返されたことがある。神戸で大災害が起こっても、遠く離れた所にいる人の心は揺さぶられず、被災地にいる人が孤立している感じがした」と話す。

ふるさとを失う辛さ 

 阪神・淡路大震災の経験もあり、東日本大震災のときにはボランティアを行うことで助ける側に回ったというオーナーの「iina」さんと「リョウ」さん。
 東日本大震災当時、原発事故の影響による放射線を過度に恐れる人が多く、不安をあおるようなデマも拡散した。「僕らが辛かったのは、ふるさとを失うということ。もしどこかで震災が起こったら、生まれ育った町を捨てないといけない人も出てくる。でも事実に基づかないことによって出ていかないといけないのだとしたら、あまりにも不公平だと思った」と「リョウ」さんは話す。

(写真:スタッフとinkの店内で調理をする「リョウ」さん。 「ink BOOKS & COFFEE」提供)

南相馬でのボランティア経験

 理化学研究所の元研究員で、放射線の専門資格も持っている「iina」さん。二人はまず南相馬市で、放射線の正しい知識についての講演会をはじめとするさまざまなボランティア活動を行った。「神戸にいるボーイスカウトの学生を何十人も連れて、放射線が高いと言われている場所でキャンプをしたこともある。県外の人にアピールするとともに、地元の人に『子どもたちが南相馬に来てキャンプをしている。ここは大丈夫なんだ』と思ってもらいたくて」とリョウさんは話す。
 他にも、現地のボランティアと農地の放射線量を計測して安全性を確かめたことや、福島産の牛乳やお米、野菜を神戸に送ってもらい、六甲の催しで一緒に売ったこともあるという。

ボランティアが集い、語る場所

 南相馬市には、ボランティアが集まる「みんな未来センター(通称:みみせん)」という拠点がある。現地の人も、リョウさんやinkオーナーのように遠くから来たボランティアも一緒に集まって、「5年後、10年後の福島」についてポジティブに語り合ったことがある。

語り合える場所を、神戸にも

 「それがすごく良い時間で、『みみせん』のような拠点が神戸にもあったらいいよね、という話になった。そこで、inkの前身として王子公園に『ミュージアムベース』というコミュニティスペースを作った。福祉団体の講演会や、英会話教室、学生の発表が行われた。さらに運営資金を稼ぐために、夜はバーとして営業していた」とリョウさんは語る。ただ、火事が起こってしまい、泣く泣く店を閉めることに。

 半年から1年ほど経ったころ、また「iina」さんが「もう1回やりましょう」と作ったのがこの「ink BOOKS & COFFEE」。

(写真:店内の様子。2023年4月22日撮影)

学生には、「即戦力」をもってほしい

 オーナーは、inkを運営する学生のために場所を提供し、経済面や経営方針などさまざまな支援をしてきた。なぜ若者に店を託したのか。
 「災害が起こったとき、すぐ動ける人間はそう多くいない。とりあえず傍観して、誰かが動き出したら自分も動くか迷いだす人が多い。だから、災害が起こってすぐ行動に移すことができる、即戦力になる人間を増やしたいと思った。例えば神戸大を巣立った学生は今、全国にも、海外にもいるはず。災害が起こったときや困ったとき、各地から集まって助け合えるような人たちが、チームとして入ってほしい」とリョウさんは話す。オーナーらは、そんな心意気のある学生を、inkのメンバーに募った。

 オーナーたちの意思を継いだ学生は、どのような思いでinkに集うのか。記事は「inkに集え③」に続く。

《ink BOOKS & COFFEE》
●場所=神戸市灘区六甲台町6-20(店舗は2階)。
●アクセス=神戸市バス36系統「神大正門前」駅から徒歩3分、阪急電車神戸線「六甲」駅から徒歩15分。
●営業時間(2023年5月現在)=
▽カフェ&バー
毎週金曜日、土曜日16時~。
▽コワーキングスペース
年中無休、24時間営業。
●コワーキングスペース利用方法=
カフェ&バー営業中に、スタッフへ申し込み。
●問い合わせ=
▽Instagram
https://instagram.com/ink_booksandcoffee?igshid=YmMyMTA2M2Y=

▽公式サイト
https://inkbooksandcoffee.jp/

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