神戸大の陸上競技部に所属する山科真之介さん（国人４年。岡山大安寺）は、国際大会への出場を見据えて日々走り続けている。専門は短距離で、４月に行われた兵庫県インカレでは、４００ｍＨで自己最高の４９秒６１で１位となり、兵庫県学生の最高記録も更新。さらに、ユニバーシアード日本代表の選考を兼ねた日本学生個人選手権では、惜しくも代表を逃したが２位入賞を果たした。今後、来年のパリ五輪、再来年の東京世界陸上の日本代表を狙う。素晴らしい活躍を見せる山科さんに、陸上を始めたきっかけや、４月の大会の振り返り、今後の目標についてインタビューした。＜尾畑陽貴、本多真幸＞

聞き手）４００ｍＨを走る上での自分の強みは何ですか？
山科）スプリントの力に自信があるので、他の選手が頑張っていくところを、余裕を持って前半から最後まで走り切れるところです。また、体格（身長１８１センチ）にも恵まれていて、自分はストライド（一歩）が広く、ハードルの間を楽に走れるので、その点でも周りの選手と差がついていると思います。

バスケのために始めた陸上　結果が出始め、思い入れ強まる

聞き手）陸上を始めたきっかけは？
山科選手）中学１年の時に始めました。小学校の時にミニバスケットボールをしていたんですが、中学校にはバスケ部が無く、作ろうとはしたんですけどうまくいきませんでした。高校からバスケのクラブチームに入ろうと思って、その時のための体力づくりとして陸上を始めました。

聞き手）そこから高校、大学と続けてきたのは？
山科）最初は遅かったんですけど、中３のときに結果が出始めました。中等教育学校だったので高校受験もなくそのまま部活を続け、やめるタイミングを逃したというのもあります。大学に入ってからは、陸上でしっかり結果を残したいという気持ちが強くなっているので、学生のうちは頑張ろうと思います。

昨季はケガで伸び悩む

聞き手）昨年はケガで記録が伸び悩んでいたようですが、実際ケガの詳細と競技への影響について教えてください。
山科）足の脛が痛むシンスプリントというケガをしたり、足の甲を痛めたりするなど、膝より下のケガが多くて、半年ぐらい色んなケガが治り切らずにずっと続きました。練習はあまりできないし、試合でも結果でないし、そもそもまともに走れないしで、心理的にも辛い時期が続きました。

聞き手）つらい時期を抜け出せたのはどうしてですか？
山科）怪我が治ったことが大きいです。着地しても足が痛くなくなり、十分に練習ができるようになって、試合でも全力を出せるようになりました。

４月に兵庫県学生の新記録　ユニバーシアード派遣標準記録も突破

聞き手）４月４日、兵庫県インカレ（４月４日）の４００ｍＨでは、自己新記録の４９秒６１を出し、兵庫県の学生記録を塗り替えたほか、大学生の国際大会であるユニバーシアードの標準記録も突破しました。調子が良かったということでしょうか？
山科）そうですね。「もうちょっといくかな」とは思ったんですけど。次は関西学生記録（２０１１年立命大の小西勇太による、４９秒４１）まであと０．２秒なので、サクッと更新して行きたいです。ユニバーシアードはあと一歩のところで選考に漏れてしまったのですが、日本選手権の方はもう標準記録を切っているので、しっかり勝負しに行って、メダルを狙いたいです。

聞き手）何かレースのプランなどはあったのですか？
山科）自分の歩数で進めていって、後半まで体力を温存して、最後出し切るというプランで作戦を組んでおり、実際に最後出し切ることができたので、予定通りだったと思っています。

全国２位も、日本代表逃す　課題はプレッシャー

聞き手）ユニバーシアード日本代表のかかった全日本学生個人選手権（４月２３日）では、タイムを落とし２位。代表を逃しました。何かうまくいかないところがあったのですか？
山科）情けない話、プレッシャーも結構あって。（自分は）一応優勝候補でしたし、有力選手だったと思うので、そのプレッシャーはあまり感じたことのないものでした。しかも代表がかかっている中で、うまく自分のパフォーマンスを十分に発揮できなかったことは、アスリートとして弱かったかな、と思っています。

聞き手）山科さんにとって、今までで最大の舞台だったということ？
山科）そうですね。同じ大会は以前にも出たことがあったし、日本代表選考会も何回か出させて頂きました。けど、自分が実際代表の標準を切っていて、優勝候補で名乗りを上げて出場するということは初めてでした。
　（予選、準決勝、決勝と）３本走りきったことは自分の中で大きな自信につながったんですけど、勝たないといけなかったので、守りに入った姿勢を後悔しています。もっと前半からハードに攻めて攻めて攻めまくれば、結果は変わってたかなと思います。

日本代表目指す　２４年パリ五輪、２５年東京世界陸上を視野に

聞き手）４００ｍＨで４８秒台を目標にされている。
山科）兵庫県インカレでユニバーシアードの派遣標準記録（４９秒９５）を切れた形になって、次に目指すのは世界陸上やオリンピックになってきます。その標準記録が、年によって変わりますがだいたい４８秒７～９くらいで、４８秒台を出してしまえば日本代表に近づけるからです。

聞き手）タイム以外にも、さらに大きな目標があれば教えてください。
山科）大きな目標は立てずに見たところを頑張っていくタイプなんですけど、とりあえずは来年のパリオリンピックと世界陸上の代表を勝ち取って、日本を背負って走りたいと思っています。

毎日の練習で「絶対に成果を出す」意識

聞き手）かなり高い目標だと思いますが、達成するために練習ではどんなことを意識していますか？
山科）心掛けているのは「その日やる練習で絶対に成果を出す」ということです。自分が陸上に関してやること全てで、「絶対にこの練習で一つ成果を残してやろう」と思ってやっています。きつい練習もあるんですけど、そのときはライバルと競っていると思って、絶対に負けられないと全力を出し切るようにしています。

元世界９位の安部選手は同郷の先輩　同じ指導者の下で「追い抜きたい」

聞き手）陸上競技部にはコーチがいませんが、技術などをどうやって改善しているのですか？
山科）オフの日には地元岡山に帰り、コーチに教えてもらって、それをまた自分で落とし込むようにしています。もう引退されたのですが、岡山には４００ｍＨで（元）世界陸上９位（２０１９年）だった安部孝駿選手がいて、その人を指導されていた長谷川昌弘コーチに教えてもらっています。安部選手を追い抜きたいので、同じコーチにお願いしています。

文武両道　卒論のテーマはプレッシャー　

聞き手）卒業論文はどのようなテーマの予定？
山科）スポーツ心理学系のゼミに入っており、スポーツをするときのプレッシャーに関して書こうと思っています。
　細かいアプローチはまだ先生と相談中ですが、プレッシャーにはやめたくなる・逃げたくなるものだと思われているんですけど、パフォーマンスを高める要因でもあることが先行研究から分かっています。そこで、その違いが生まれる原因とか、プレッシャーを生かしてパフォーマンス向上につなげる方法とかを考えています。
　自分が不思議に思っていたところであり、競技にも生かせるので、もっと掘り下げていきたいです。

聞き手）学部卒業後も陸上は続ける予定ですか？
山科）大学院に進もうと考えていて、学業も陸上もしっかりやり切ろうと考えています。Ｍ１のときにパリ五輪、Ｍ２のときに東京世界陸上なので、タイミング的にもちょうど良いかなと思います。

　山科さんは５月２４日（水）～５月２７日（土）に、大阪市東住吉区のヤンマースタジアム長居で行われる関西インカレに２００ｍ、４００ｍ、４００ｍＨで出場、６月１日（木）～６月４日（日）に同じ場所で行われる日本陸上競技選手権に４００ｍＨで出場予定。

山科真之介（やましな・しんのすけ）
２００１年生まれ。岡山県、岡山大安寺中等教育学校出身。神戸大学国際人間科学部発達コミュニティ学科４年。中学から陸上競技を始める。専門は短距離で、３００ｍ、４００ｍ、４００ｍＨなどに出場。４月に出した、男子４００ｍＨの自己ベスト４９秒６１は、兵庫県学生の最高記録。友人との雑談や、実家でピアノを弾くことが好きだという。

最高記録
４００ｍ＝４７秒０４。
４００ｍＨ＝４９秒６１。

●主な成績
２０２２年。
５月、関西インカレ。男子２部４００ｍに出場し、４７秒１９で１位。
６月、日本陸上競技選手権。男子４００ｍに出場。
１０月、国民体育大会。成年男子３００ｍに出場し、３３秒４６で５位。成年男子４００ｍＨに出場し、５０秒８０で８位。
２０２３年。
４月、兵庫県インカレ。男子４００ｍＨに出場し、４９秒６１で１位。兵庫県学生新記録。
４月、日本学生陸上競技個人選手権大会。男子４００ｍＨに出場し、５０秒８７で２位。

了