繰り返される『迷惑行為』 試されるリスク管理②

 3月中旬、神戸大非公認バドミントンサークルBADBOYSが旅館の備品などを破壊している様子の画像や動画がX(旧Twitter)上で拡散された。それらの画像や動画は、もともと当該団体所属の学生がインスタグラムに投稿したものだった。学生は、なぜ一般的に見て不適切な行為をSNSに投稿したのか。また、自分が巻き込まれないためには、どう行動すればよいのか。ニュースネット委員会は「迷惑行為」について研究している、金城学院大学の北折充隆(きたおり みつたか)教授にインタビューを行った。<奥田百合子、蔦旺太朗、佐藤ちひろ>

※こちらは「繰り返される『迷惑行為』 試されるリスク管理」の後編です。前編はこちらからご覧いただけます。

(写真:Zoom取材に応じる北折充隆教授。2024年3月28日22時撮影)

▼現代は集団リンチが容易に

 このような不適切行為が行われている学生団体はBADBOYSだけなのだろうか。北折教授は、「他の大学も結構やっていると思いますよ。僕が若い頃は、サークルで新入生を素っ裸にして歩かせるとか、そういうことをやっている人たちもいましたので。僕は引いていたんですけども」と話した。

 「僕は正直そういうレベルのものを咎める必要はないと思うけど、神戸大のはやりすぎです。でもそこまで目くじらたてて、大学を退学にさせるとか、人生を狂わせるようなことかというと、それはネット上の集団リンチに近いんじゃないかと思います。SNSが普及したことで匿名で正義を振りかざすことができるようになり、良くも悪くも集団リンチがやりやすくなった。そういう意味では、最近の学生はある意味かわいそうだと思います。僕が学生時代にめちゃくちゃやっていた人たちは、今だったらどうなっているんだろうと考えると薄ら寒くなりますね。最近の学生たちを見ていると、すごく大人しいし、真面目でちゃんとしているんですよ。上の世代の人たちは偉そうなことを言えた義理じゃないです」と自身の学生時代を振り返った。

▼どの程度の制裁が必要か

 2023年に起きたスシロー迷惑動画事件では、問題を起こした少年に対して約6700万円の損害賠償の請求があった(後に取り下げ)。そのような学生の不祥事に対する制裁は度が過ぎているのだろうか。これに対し北折教授は、「表に出た以上はしかるべき制裁を受けるべきだと思います。でも、表に出ていないことはいっぱいあると思います。今回の件も表に出てしまった以上は責任を取るべきってことですね」としつつ、「今の世の中はいろんなことが社会に出やすくなっている。そのリスクをもっと自覚するべきなんじゃないかですかね」とリスク管理の重要性を強調した。

▼旅館も大ごとにしない 経済的側面もあるか  

 「なぜ旅館側は今回の不適切行為について大ごとにしないのか」という質問に対して北折教授は、二つの理由を挙げた。

 一つ目は、旅館側の『若い子たちは騒ぐもんだから大目に見てやる』というやさしさだという。一方で、「でも、やさしさに甘えて無茶を暴走させて良いというわけではないです」と話した。

 考えられる二つ目の理由としては、ホテルのビジネス的側面もある。「なんやかんや言いながらビジネスとしては70人も泊ってくれたら金額としては大きいですよね。天井を突き破れば怒られるかもしれないですけど、ちょっとくらい騒いでも怒られない、ということになれば、他のサークル、他大学にもあそこは利用しやすいといううわさが広まる。そうなれば合宿の宿泊先として使ってもらえるという、ビジネス的な側面も正直あったのではないかと思います。でもそういったことに甘えてしまってはいけないということです」と持論を述べた。

▼迷惑行為 卒業後にはよい思い出に

 「卒業して10年もすると迷惑行為もよい思い出になる人はいっぱいいる」と北折教授は指摘したうえで、「悪いことをしたということも美化してしまう側面は残念ながら人間誰でもある。今回のようにここまで大きくなってしまうと、黒歴史みたいになって封印したい過去になると思うが」と話した。しかし「神戸大生は事の重大さを理解しているはず。おそらく深く反省して『就活に響くぞ』と言われてびびっているんじゃないか」と付け加えた。

▼大学 どこまで介入すべきか

 大学は課外活動団体の情報を、どの程度把握でき、また、するべきなのか。北折教授は、「今回のような非公認団体の状況を大学が把握するのは難しい。部活など、公認のものはコントロールできるが、非公認の団体は学校の管轄から外れてしまっている。だけど名前は『神戸大学』という名前がついているので一番厄介なパターン。でも予算や人員などの問題からすべての団体を公認するわけにはいかない」と話した。

 学生支援課は、今回の不適切行為を受けて、3月21日夜に「学生として節度ある行動について」という注意喚起書を学内の非公認課外活動団体宛に通達した。注意喚起書の中で、大村教育担当理事は今回の事案について「極めて非常識なものであり、恥ずべき行為であることに議論の余地はない」として、倫理観と節度を持った行動を学生に求めた。

 また、3月25日に行われた神戸大の記者会見では、大村副学長(教育担当理事)が、今後学生による不適切行為を防ぐ方法として、新入生に対する啓発活動を行うと表明した。

(神戸大学六甲台第1キャンパス本館。2024年4月10日17時53分撮影)

▼過去のケースを共有する重要性

 神戸大の対応に関して、北折教授は「新入生に啓発することは間違いなく意味はある。特に今回の新入生はビビっちゃって(このような不適切行為を)やらないんじゃないか。今の2年生、3年生、4年生にも啓発するべき。それをやっていればよっぽど無茶苦茶なことにはならないのではないか。今の若い子たちって真面目だしまともだから、今後はもっとこういうことがきちんとなっていくんじゃないかな。運転免許を取るときに学ぶ実際の事故例のように、ケースを見せることに効果があると思う」と話した。

 加えて、大学の在り方として、「学生はみんな大人なので、犯罪になること以外は放任し、個人の自由に任せるべき。あまりに逸脱しすぎると許されないことがあると話す以上のことはできないし、するべきでもない」と話し、あくまで授業など、学習に関すること以外にはあまり踏み込む必要性はないと主張した。

 不適切な行為が行われている現場に居合わせた場合、それを制止することは難しい。しかしながら、そのような場に行かないことは、それほど難しくないのではないか。行きすぎた悪ノリや悪ふざけは、突発的になされるものは少ないため、学生は意識的にリスク管理を行うことで、巻き込まれないようにすることができる。具体的には、日頃の集団の雰囲気を見て、少しでも危機感や違和感を抱いた場合は、参加を見送ることができる。

SNSでの拡散が容易な現代だからこそ、学生個人の危機管理能力が試されている。

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