藤澤正人学長の任期が2025年3月31日で満了することに伴い、11月8日に次期学長候補者に対する意向投票が行われる。候補者は藤澤・現学長と國部克彦・経営学研究科長で、10月4日には学内での募集を経て作成された質問書への回答が公表された。質問は職員の過重労働や学内でのパワハラ問題など、労働環境に関する質問が多くみられた。<ニュースネット取材班>
参考記事=学長選・最終候補者は現学長と國部経営学研究科長 所信表明と面接映像が公開 | 神戸大学NEWSNET委員会
(写真:神戸大六甲台第1キャンパス)
藤澤正人学長の任期が2025年3月31日で満了することに伴い、11月8日に次期学長候補者に対する意向投票が行われる。候補者は藤澤・現学長と國部克彦・経営学研究科長で、神戸大サイトで所信表明と面接映像が学内限定で公開されている。
財源確保と改革 両候補者のキーワードに
國部候補者は所信表明で、3つの基本方針と題し、「現場の活力回復のための人事・予算・評価管理制度の見直し」、「自律変化型組織への変革・神大の強みを生かした研究・教育体制の確立」、「専門性、ダイバーシティ、意思疎通に配慮した執行運営と財源の多様化」を掲げた。藤澤候補者は、「学長として次世代を見据え危機意識を持ちながらリーダーシップを発揮して継承と改革を実行する」とし、「短期、中期、長期的視野に立った財源の確保と研究・教育への自律的支援の継続が重要。そのために外部資金の獲得に向け持続可能な発展的運営を目指す」としている。
学内関係者からの質問 候補者が回答
10月4日には学内での募集を経て作成された質問書への回答が公表された。質問は職員の過重労働や学内でのパワハラ問題など、労働環境に関する質問が多くみられた。
学費値上げへの姿勢 両者に差
質問の一つである学費の値上げについて國部候補者は、「本学の財政状況と学生の学習環境の抜本的改善のために、避けて通れない課題」であるとしつつ、「補助金依存の体質から脱却し、大学主導の創意工夫あふれる研究・教育の展開を目指す」としている。一方、藤澤候補者は「今、学生だけに経済的負担を強いてまでして得られる大学のメリットが教育研究環境、財源的にどれくらいあるのかを、まず、しっかりと検討すべきである。拙速に考えずにすべての国立大学、国、学生、社会の間でじっくりと議論していくべき課題」とより慎重な姿勢を示した。
2024年9月には東京大学が2025年度入学生から学部生の授業料を約11万円引き上げる決定をし、様々な議論を引き起こした。一部の学生による学費値上げの反対運動も行われた。一方で、国立大学協会は、国からの運営費交付金の減額や近年の光熱費や物価の高騰などから、各国立大学が危機的な財務状況であるとする声明を出している。
(写真:座右の銘が書かれた色紙を持つ國部候補者。10月16日18時37分撮影)
(写真:藤澤現学長。神戸大サイトより)
問われる 労働環境、パワハラの改善策
質問書では労働環境に対する質問が多く見られた。中堅職員の退職が相次いでいることに対する認識と対策について藤澤候補者は、「労働時間に関して、一部の部署で業務負荷が大きく残業時間が多くなっていることは認識しており、すでに取り組んでいる業務の効率化・省力化を加速するとともに、事務職員の数を増やして各部署への人員配置の適正化に取り組み、就労環境のさらなる改善を図る」としている。一方で國部候補者は、「中堅職員の退職だけではなく、若手職員の退職も増加しており、早急に対策を打たなければならない深刻なレベル」にあるとし、「まず学長が先導して業務量を減らす強い指示を出し、プレッシャーの少ない職場環境に転換することが必要」としている。
ハラスメント対策 焦点に違い
「学長候補者として、本学におけるパワハラの現状認識、予防対策、発生後の対応策についてどう考えているか」という質問に対しては、藤澤候補者は「パワーハラスメントに関しては、本来あってはならないものですが、本学では、まだ根絶には至っていない。なかでも、大学院生と教員との上下関係の間でのハラスメントが起こりやすい状況になっている」と大学職員ではなく教員―学生間のハラスメントに着目し、「ハラスメントを早期に見つけること、黙認しない、そして、躊躇なく相談しやすい環境をつくることが重要」だとした。一方で國部候補者は、大学職員などのパワハラ被害に着目し、「パワハラを起こしやすい職場環境の悪化に重大な問題がある」とし、「常に意思疎通できる風通しの良い体制と、パワハラを許さない組織風土を確立するために監事を中心とした学内の既存組織とは独立したハラスメント対応の第三者機関など、中立的な機関を設置する必要がある」とした。
健康でいられる職場 求める教職員
最後の質問である「職員の過重労働」に対して國部候補者は、「明らかに過重労働が原因で教職員が健康を著しく害する不幸な事例も続いており、早急に、学長が職員の過度な業務を見直す強い指示を出して、改革を断行する必要がある」とし、「特に深刻なのは補助金をめぐる業務過多であり、トップダウンで部局に下す業務を削減する必要がある」とした。藤澤候補者は、「日頃から職場内でのコミュニケーションをしっかりと図り、その人にとって過重な労働とならないよう個々の能力を考えながらよりきめ細やかな対応」をし、「ストレスのない体に優しい安全な職場環境で健康的な職業人生を送れるような環境を構築しなければいけない」とした。
11月8日に次期学長候補者に対する意向投票が行われ、12日に結果が発表される。
【令和6年度 学長選考】=https://www.kobe-u.ac.jp/ja/about/public-information/selection/r6/
▼学長選の流れ
9月 2日(月)~13日(金):最終候補者への質問事項の募集
9月20日(金):募集した質問事項を踏まえた最終候補者への質問書の作成、送付、公表
10月 4日(金):①質問書に対する最終候補者からの回答の公表 ②投票権者数、投票する日時、場所、不在者投票をなしえる期間、学長候補者の氏名、所属の告示
11月 8日(金):意向投票の実施(投票方法:単記無記名投票、1回限り)
11月12日(火):①学長選考・監察会議による学長予定者の選考結果 ②意向投票結果
【学長選考の流れ】=https://www.kobe-u.ac.jp/sites/default/files/doc-announcement/2024-05/flow_20240513.pdf
了
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。