自転車で通学していた高校時代、片思いの最中に夢見ていたのは恋人との電車通学だった。他愛のない話題を車内で語り合うつつましい情景を思い浮かべながら、駅に着くと手を振り「また明日」と告げる毎日が繰り返されていた。
時は流れ、いざ電車通学を始めると淡い夢なんてどこ吹く風。1限の授業に出るために午前6時半過ぎに家を出て駅へ急ぐ。約70分間の乗車中、他の乗客と押し合いへし合いしながら無理な体勢で立ち続けるのはなかなか苦痛だ。電車を降りれば今度は「登山」。汗を拭いながら急坂を登りきった頃には、授業に集中する気力・体力は消えてしまっている。結局、通学時間は片道約2時間に達する。こんな生活のおかげで体重は2キロ減った。
嫌でも考えるのが下宿という選択肢。日本学生支援機構が2012年に実施した「学生生活調査」には、片道の平均通学時間の設問が含まれる。京阪神にある大学の昼間の学部に通う学生では、自宅通学者が片道約73分間なのに対して学寮通学者や下宿等通学者は約17分間。うらやましい限りだが親からは「下宿するなら全て自分で賄え」との厳命が下っている。当分できそうにない。
先日、高校時代の片思いの相手と久しぶりに会ったが、「念願の電車通学はどう」と問われてしまった。「いや、そういうことじゃなくて……」という台詞は胸にしまい、苦笑いで答えた。いよいよ新学期。また早朝の満員電車と格闘する日々が始まる。
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