「脚本の力が大きい作品でした」と主役の雀野ちゅんさんが話す「MOTHER」は、出産を控えたつるのという女性が主人公。あるトラウマから逃れるためにつるのが作りだした想像上の友達「ぼーちゃん」を探して、つるのは夫らと想像の世界を旅する。そこにはつるのが思い描いていたキャラクターと、生まれてくる彼女の息子のさまざまな未来の姿がいた。オカマや殺人鬼、重病患者など、複数の息子はつるのに子を生むという現実を突きつける。つるのは母になる覚悟を決めることができるのか。そこがこの舞台の着地点だ。
雀野さんが「母になる前に母になる人はいない。だから難しかった」と語るように、出産を経験したことがない雀野さんには分からない部分が多かったそうだ。「母になりたい」と思う気持ちとそれを怖がる相反する気持ちを理解するために、自分の母親や知り合いに話を聞いて役作りに努めたという。その甲斐あって見に来ていた女子学生は「母になる前に誰もが思うことを表現した舞台。母になるということを考える機会になった」と話し、作品のメッセージは観客席にしっかりと届いたようだった。
母になること、という大きなテーマながら劇中には小ネタもちりばめられ、笑いあり涙ありだったこの舞台。特殊効果としてスモークやプロジェクターも使われ、卒業公演ならではの完成度の高さも見せつけた。家族の勧めで何となく観に来たという中学生は「1人1人の熱がすごかった。絶対にまた来ます!」と興奮を隠せない様子だった。
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