レスキュー工学の竸基弘賞授賞式 能登半島地震を受け「技術進むも配備が不十分」

 2024年1月9日に第19回竸基弘賞授賞式が行われた。竸基弘賞は将来レスキュー工学を担う若手の研究者を奨励する賞で、29年前の阪神淡路大震災を契機に創設された。災害現場で利用される多脚・索状ロボットや作業アーム付きロボットの研究などが表彰された。授賞式では、1月1日に起こった能登半島地震を踏まえ、技術の配備不足に対する懸念の声も上がった。<奥田百合子>

 国際レスキューシステム研究機構(IRS)が、第19回竸基弘賞授賞式を2024年1月9日の13時半から16時半に神戸ポートオアシス(神戸市中央区)で行われた。

 竸基弘賞は防災・レスキューシステムの研究開発において、 学術・技術的に顕著な業績をあげた概ね40歳未満の研究者や技術者を表彰し、レスキュー工学を担う若手の研究者を奨励する賞だ。

 第19回学術業績賞を受賞したのは、安部祐一さん(大阪大学大学院基礎工学研究科 助教授)。災害現場など人の立ち入りが困難な場所で利用される多脚・索状ロボットの開発に貢献した。
 多脚ロボットでは、生物を参考に、脚や胴体の弾性特性を利用して転ばずに歩くことのできる制御を確立した。索状ロボットでは、瓦礫環境の踏破や世界初の空飛ぶ消火ホースの安定浮上を実現した。

 小島匠太郎さん(東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センターフィジカル研究部門 特任助教授)は技術業績賞を受賞。高い場所や狭い空間での作業を可能にする自由度の高い作業アーム付きロボットOnixの研究開発を行なった。
 Onixは、長崎市・軍艦島において、人の立ち入りが禁止された建物の劣化状態や構造耐力の調査に利用される。

「竸基弘賞」創設のきっかけ

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、6400人以上の尊い命が奪われ、神戸大学では学生・教職員44名が亡くなった。
 IRS副会長の松野文俊(京都大教授)は当時神戸大学工学部に在職していたが、指導していた神戸大大学院博士前期課程の1年生であった竸基弘氏を亡くした。  
 倒壊したアパートの下敷きになり23歳で亡くなった彼は将来、「ドラえもんのような人を癒し助けてくれるロボットを作りたい」という夢を語っていた。夢半ばで瓦礫の中で亡くなっていった彼の遺志を継ぎ、 その夢の一部でも実現し、6400人以上の亡くなった人々を忘れないための記念として2005年に「竸基弘賞」が創設された。

 国際レスキューシステム研究機構会長の田所諭さん(東北大学教授)は、開会の挨拶で「阪神淡路大震災でたくさんの方が亡くなった経験に基づいて、我々はこのようなことが二度と起きてはならないという思いを強くして、研究開発に取り組んできた。95年に草の根から始めた取り組みは、少しずつ技術的に身を結んでいる。しかし、能登半島地震を見ると、先端技術が十分に配備されていないと感じる」とレスキュー工学の研究成果が十分に実用化されていないことに対する懸念を述べた。

▽表彰結果

■学術業績賞  安部祐一氏(大阪大学大学院基礎工学研究科 助教)
■技術業績賞  小島匠太郎氏(東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センターフィジカル研究部門 特任助教)
■奨励賞受賞者 
ロボカップジュニアIRS賞『Hong Kong Line Team』                    
(Leung Kuk Centenary Li Shiu Chung Memorial College)

レスキューロボットコンテスト奨励賞 『QoQ』                       
(芝浦工業大学マイクロロボティクス研究室)

レスキュー工学奨励賞   栢分 崚汰郎(東北大学)                     
「竜脚類の骨格から着想を得た多関節アーム機構」

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